お話は以前に何度かさせていただいていると思うのですが、
今シーズン、「なるほど、やはりそうか。」と思える
コートを展示会で見つけてしまいました。
NO CONTROL AIR
衿付きWOOLコート
olive ￥49,500+tax
一見シンプルに見えるのですが、実はシンプルに
コートらしいところが見当たらないコートです。
衿は前下がりの付いたブラウスのような素敵な衿。
彼らにしてはやや女性的なデザインに感じます。
ここも気に入った点の一つです。
そして、正面からの写真でお気づきの方も
いらっしゃるかもしれませんが、ボタンの位置は中心ではありません。
ものすごく狭いバブルブレストのような設定でのシングルのデザインです。
トップボタンだけ、打掛が狭い感覚で付いています。
さらに、ボタンのサイズもコートとしては小さめです。
一般的にはジャケットの袖口に使われるようなサイズでしょう。
フロントのボタンは、比翼仕立てでボタンは見えないデザインです。
内側の別布は、オリーブに関しては少し配色気味になっています。
袖付けは彼らの定番デザインで、ドロップショルダーで
袖口に小さな刻みスリットがございます。
このポケットも気に入りました。
可愛らしい印象のある四角いポケットは、
コートとしては少し高めの位置に設定されています。
通常のジャケットのような位置でしょうか。
見た目のバランスもすごく新鮮です。
地衿はツイードのジャケットのような仕様。
それに合わせるかのように、、サイドはスリットではなく
ベントを採用しています。このデザインに、最も天邪鬼を感じました。
コートでは、背面にベントを使う場合がほとんどで、
サイドには通常スリットを用います。
しかしこちらのコートはサイドベント。
まるで英国紳士の昔ながらなツイードジャケットを思わせる。
navy
多少、ふんわりとした毛足の感触のあるメルトンです。
唯一シンプルなのが素材使いだといえるでしょう。
このような地厚な冬の素材で比翼仕立てをやる場合、
裾のごろつきをどうかわすか？一つ気になるところなのですが、
とても丁寧に、気遣いのある処理がまた素敵です。
olive の色の感じはこちらを参考にしてください。
室内で見るともう少し落ち着いた色に見えますが、
自然光ではややグレイッシュなオリーブです。
なかなか見ない、素晴らしいオリーブだと思います。
相変わらず、ドロップショルダーにやや短めの袖。
バスト寸から裾に向かってサイズが小さくなるような
コクーンシルエットも、彼らのコートに多く見られる特徴です。
こちらのコートもそのようなシルエットになっております。
シルエット全体のバランスをとるかの如く、こちらも
少し変わった位置にダーツが施されます。
通常は絞りたい場所の運動量や分量を確保するための要素ですが、
背面のこの位置で、このゆとりあるデザインですから、
明らかに見た目のシルエットバランスを形成するためかと。
他の多くのお洋服にも採用しているデザインですので、
彼らの洋服のアイコン的役割も担っています。
他にこのようなことをするデザイナーはいませんから。
下がりのあるすっきりとした衿ですので、
ノーカラーのコートと同じような感覚でストールも取り入れてください。
シンプルなnavy がとてもよく似合うデザインです。
遠目に見れば見るほどに感じる、婦人用のジャケットを
長くしたような不思議なバランス。
このようなチェックのストールを巻いてみると、
全くデザインは異なりますが、なんだかメルトンの
ダッフルコートを着ている姿が重なります。
もしかしたら、この四角い高い位置のポケットは、
本格的なダッフルコートを思い描いたデザインなのかもしれない、、
スタイリングを組みながら、そう感じました。
そして私が気に入ったポイントをもう一つ。
衿付きで、開けてもサマになるコートであること。
メルトン素材のコートに多く見られるステンカラーや
P-コートなどは、開けて着るとサマにならないものが多いもですが、
ショールカラーコートやノーカラーと同じく、さらっと
羽織って着てもかっこよく感じたのが展示会でも印象に残りました。
彼らの作るお洋服のネック寸が小さなことも関係しているのだと思います。
そしてサイドベント。
シンプルそうに見えて、、どこもかしこも変わったコート。
このようなデザインのコートは、間違いなく彼らにしか作れない。
いつもNO CONTROL AIR の展示会に赴くと、コートもいろいろ
あって悩ましいのですが、今シーズンはこちらがダントツで気に入りました。
メルトンもさほど重さはなく、素材感もいい。
裏地も付いて真冬にも温かい。
ありそうで他にないシンプルな仕上がり。
彼ららしさが詰まったデザインディテールの数々。
今年はお勧めのコートが多くて困ります。
