2021年1月31日日曜日

付加価値を考えてみる

まだまだ寒い真冬の季節、

お洋服業界では、否が応でも春物の入荷が始まります。

アナベルでも、すでに半分くらいが春の商品に入れ替わった店内。

皆様、手に取るのは寒くてもやっぱり春のお洋服。

ここ数年、季節の変わり目を告げるかのように、

一番に入荷をしているパンツがこちらです。










ゴーシュ

カツラギワイドパンツ ¥24000+tax

6年ほど前、「太すぎる」という声を多くいただく中、

おしゃれに対して敏感な方たちの間でジワジワと人気を

集めていったこちらのパンツ。

今では誰も「太すぎる」とは思わないところがファンションの

面白い経過だと思っています。











今年はネイビーの代わりに新色でグレーが登場。

わずかな色の変化で、長く継続されるところも

嬉しいところです。










左から、ホワイト、ベージュ、グレー、ライトブルー、ブラック。

もう数本目のご購入という方も珍しくなくなりました。

特に嬉しいのは、「すごく穿いたから、また欲しい」という

シンプルなリピートに対する好反応です。










常に変化を続けるファッションの中で、

このカツラギワイドパンツは、一切の変化をせず、居続けました。

その時々で、評価は変わるものの、ずっと在り続け、

今では定番としてお勧めできるものの一つとなりました。










まず「カツラギワイドパンツ」の「カツラギ」が商品名ではなく、

素材の名前であることからお伝えしたいと思います。

もう何度もご紹介しておりますので、簡潔に。

数年前、このパンツの人気が急上昇する中で、「カツラギワイドパンツ」が

「カツラギ」というブランドの「ワイドパンツ」だという認識を

持たれる方が一定数いらっしゃいました。

それはお電話での問い合わせで、少しづつ判明していきました。

「カツラギのワイドパンツは扱ってますか?」というお問い合わせが

多い時で1日に10件や20件ほどかかってきていました。

「ゴーシュのカツラギワイドパンンツですね。」と切り返すと、

多くの方が、、「ゴーシュ?」いや「カツラギ」です。

という反応が返ってくるのです。











そこで、アナベルのブログでは、カツラギが素材の名前であることを

たくさんご紹介しました。「チノ」や「バーバリィクロス」、

「ウェストポイント」や「ウェザークロス」が生地の名前であるように、

「カツラギ(葛城)」も生地の名前なのです。

おそらく、インスタなどで影響力のある誰かが、

ゴーシュのカツラギワイドパンツ、という紹介をしたときに、

いつの間にか肝心のゴーシュが抜けて、

「カツラギワイドパンツ」だけが一人歩きしたのだと思います。

言いやすいですしね。











もうずっと扱っているホワイト。

途中、生地が変わった時も白は白ですから。










歴代のいわゆるベージュより薄い、ライトベージュ。

こちらは前々シーズンからベージュに変わって登場したお色です。

久しぶりに変わったら変わったで、、前の色が欲しかった。。

などと言われてしまって、人気者は大変です。

またそのうち、変わるかもしれませんよ。


















コットンパンツで価格が24000円というと、諦めるお客様もいて

然るべきお値段かと思います。それでもこれだけたくさんの方が

リピートをしてくださるのは、ゴーシュの実力を置いて、他には

考えられません。










モノの値段はおおよそ原価で決まりますが、それだけではないモノも

世の中にはたくさん在ります。絵画もそうでしょうし、

陶芸の世界でもあるでしょう。お料理の世界にもあって当たり前です。

ただ、その価値を評価するのはバイヤーをはじめとするお客様

一人一人だということを忘れてはいけません。

そして、高い評価を受ける人たちは、一言で言うと実力があり、

相応の努力をし続けている人たちだと思います。










ゴーシュはご夫婦で展開するブランドですが、お二人とも

誰もが知るビッグメゾンのパターンナーを務めてきたことは

良く知られています。

もちろん、だから高価であるということではありません。










彼らに質問したことがあります。

「年間何日くらいパターンを引いてますか?」

返ってきた答えは、「ほぼ毎日かな、、?」

「いや、でも少し夏休みもあるし、正月もあるから。」

「300日は絶対ですけど。」

もちろん、より良いものを仕立てるためにです。

現代では、パソコンで数値を入れたら型紙が出来上がる

ソフトも多く使われる中、彼らは手で感触を掴みながら

納得のいくまで仕上げていきます。











新色のライトグレー。

さらに続けると、300日パターンを引いたことが

付加価値に繋がるわけでもなく、認めてもらえることが

とにかく重要で、大変なことなのです。










ビッグメゾンで腕を奮ってきたゴーシュも、独立して

ブランドを始めた当初は、サンプルを数点作ってはカバンに入れて

自身が良いと思ったお店に直接出向いて置いてもらえないかどうかの

交渉を繰り返していたと言います。

そして、売れない日々が約5年続いたと。。

そう、お洋服にはシーズンがあるので、結果が出てくるのに

少し時間がかかるものです。最初のシーズンは全くお店で

結果が出なくても仕方がないでしょう。

バイヤーはある程度長期的に観測します。

それが少しづつ、少しづつ広まり、なんとかやっていけそうだと

いう感触を掴むのに5年はかかったと言います。

問題は、ではいったいどこが付加価値なのか?ということです。


















それを見出すのは、いつも消費者です。

作り手は、それぞれに努力をしていますから、

「このくらいは欲しい」という値段を付けますが、

「この値段で満足した」もしくは「この値段出しても欲しい」

そういうお客様が増えないことには継続していけないのです。

ビッグメゾンにもなると、その消費者のマインドを

「宣伝」で補い、高い付加価値をキープし続けるわけですが、

我々が扱うブランドはそうもいきません。

純粋に、毎シーズン、毎シーズン、お客様を満足させ続け、

「またこのブランドが欲しい」と思ってもらえる

洋服作りを続けていかなければなりません。























そしてそれは狭き門なのです。

だってそうでしょう、考えてみてください。

一本1900円のパンツで「大して変わらない」という

評価を出す人が無数にいます。

わたしも今ではお洋服のお店をやっていますが、

洋服を買い始めた時、3900円の古着で大満足で、

何万円もするズボンを買う人たちの気が知れませんでした。

でもね、、ずっとお洋服が好きで、色々と着続けていると、

そこでは満足できなくなってくるものです。

「あ、、こっちの方がいい」って気付くんです。

でも、そうやってお洋服を楽しめる人は、きっと全体で

見ると一握りです。


















そんな狭いところで評価をされ続けているわけですから

実力がないと長くは続きません。

ゴーシュのお二人は20年以上第一線でやってきてもなお、

「自信がないから努力するしかない」と言い続けます。

わたしもお店をやっていて同じ気持ちでいますので、

すごく共感できる言葉でした。











「付加価値は?」の答えは一言では難しいということがわかりました。

ただ、作り手の自己評価とお客様の評価と、バイヤーの評価が、

一致していないことには成立しないということも確かです。


















5年前、「太すぎる」とまで言われたパンツを今見ると、

誰もそのようには感じないかもしれません。

それがファッションのトレンドなのだと思うのですが、

その中にあって、変わらずに愛され続けるものが現れます。

それを「定番」などと呼ぶのですが、それは見た目がシンプル

なものであるとは限りません。

むしろ最初は難しそうで敬遠されているものが多いように感じます。

1960年台にファッションシーンに登場したジーンズがその最たるものでしょう。

当時は「一部の不良が穿くズボン」だったそうですから。

新しい波はいつも常識の外から起こるそうです。

それに人生を賭けて挑み続けるデザイナーには、

それだけで付加価値を感じます。




































2021年1月23日土曜日

入荷のお知らせ

 

1月23日(土)

<ASEEDONCLOUD>

・Classic one-piece (うさぎ柄)


<Handwerker>

・HW jacket コットンリネンデニム


<CLOSELY>

・テレコタンクトップ


<FIRMUM>

・スーピマコットンムラ糸デニムテーパーパンツ



2021年1月19日火曜日

入荷のお知らせ

 

1月19日(火)

<ゴーシュ>

・カツラギワイドパンツ

・カツラギ定番テーパーパンツ


<TRAVAIL MANUEL>

・ライトグログラン ビッグパーカーコート

・セルビッチデニム5Pパンツ

・コンパクトチノサドルパンツ


<evam eva>

・テーラードロングジャケット


<ARTE POVERA>

・Vネック8分丈トレーナー

・タイプライターダブルジャケット

・USチノトラウザー×アフガンストール リメイクスカート


<BLUE BLUE JAPAN>

・インディゴジャガード キモノコート

・バンドカラーブラウジングシャツ


<klause>

・ベーシックシャツ(新型)

・プレーンシャツ(再入荷)

・ロングプルオーバーシャツワンピース(新型)


<HAVERSACK>

・ウェザークロスパンツ







2021年1月10日日曜日

「普通に良い服」

「パッと見の面(つら)」がバイイングの大きなポイントになる

といった話は、ブログで何度も書いたことがあります。

あやふやで根拠に乏しいように聞こえますが、

実際、とても重要です。

お店にはたくさんの素敵な作り手のブランドの

お洋服がひしめき合っていますが、その中でも、、

お客様が必ず手に取るブランドというのが存在します。

理由はきっと、「なんとなくいいと感じる」からということに

尽きるような気がします。みんながそう思えるのだろうと。

実はいくつかのブランドで見受けられるのですが、

圧倒的に多いのは、「TOKIHO(トキホ)」の洋服です。

とりわけコートに関しては、ひょっとしたら来店した

全員が手に取っているのではないかと思うくらいの

確率で、嬉しいことに、皆さんが褒めてくれます。

お値段がそれなりにしますので、皆さんが購入には至りませんが。





















TOKIHO
LIGHTNESS Ⅷ
sepia ¥74,000+tax

WOOL100% のメルトン素材は、super100's(スーパー100)という

非常に張力のある上質な羊毛を使用しているため、肌触りはとてもやさしく

ソフトで、着心地の良さにもつながっています。





















上質でしっかりとした防寒性もあるWOOLを使用した

総裏のコートで、裏地には胴裏にしっかりとしたコットン、

袖裏にやや滑りのあるコットンを用いている。

そのため、手に持った際の重量は、重すぎる感じはないのですが、

けっして軽いコートとは言えません。

クラシカルな冬のWOOLコートと言えるでしょう。
















少し張感のある生地を高温で洗い加工をしてくったりとした

風合いに仕上げています。
















内ポケットはレディースでは珍しくしっかりと3か所。

右に一つ、左に2つ。男性用のクラシックなコートの

デザインをしっかりそのまま女性用のコートに残しています。

















袖裏はソフトでやや滑りのいい生地に。

(スベスベではありません)


















衿の後ろ側や袖口に小さな刻みのあるデザインです。

















ポケット口にカーブの付いたデザイン。

使い続けるとポケット口が下がってきますよね。

最初から下げたデザインという事ですね。
















ここ何年か、「衿」の存在について継続的に注目している

デザイナーは、「LIGHTNESS」というコートのベースデザインで、

何作も世に送り出している。

ちなみに僕は、メンズの「LIGHTNESS Ⅵ」を愛用していますが、

今回ご紹介しているⅧと比較すると、もう少し衿が低く、

ノーカラーに近い印象です。

着心地は、相当にいいということは間違いありません。




















デザイナーの「吉田季穂(ヨシダトキホ)」は、生地選びから

パターンメイキング、サンプリングのための縫製、仕上げを

全て自身で行い、展示会をし、受注を貰った商品を信頼する

工場の職人さんに生産依頼するといった方法をとっています。

分業の多いアパレルにおいて、一貫して自身の目の届く

範囲でモノつくりが完結していることは、TOKIHOの

強みの一つかもしれません。

















それ以上に特筆すべきは、「着心地」ではないでしょうか。

自身のブランドを立ち上げる前は、パターンナーとして

腕を振るっていた時期もある彼のパターンは、本人曰く、

「ただただ基本に忠実に、当たり前のことを正確にやっているだけ」

というが、きっと現代の量産品にはそれが全く感じられないので、

際立った雰囲気を纏うのだとも思えるのです。

「当たり前のことを普通にやる」って洋服つくりでなくても

意外に難しかったりしますよね。

















大き目で滑りのいい裏地を付けると、なんとなく着心地は

いいように感じるのですが、これはそういったものではなく、

しっかりと肩で着て、細目にデザインされた腕を回して見ると、

まったくストレスなく動かせる。その運動が身頃に響かず、

腕を上げてみても身頃が暴れることはない。

袖付けはコンパクトに見えて、しっかりとした運動量を

確保しているお洋服です。

















こちらはモノクローム。

















身頃に対して袖がやや細身なのは、見た目がすっきり見える

という事と、防寒にも一役買っているように感じます。

実際に着ていて、袖周りがキュッとした感覚があって、

温かさを逃がさない、寒気を中に入れない、そういった

効果もある様に感じます。


















クラシカルでかっちりした雰囲気で作るのではなく、

少し生地に表情が生まれる程度の洗い加工が施された

仕上がりも、TOKIHOの大きな特徴の一つです。

ヘム(裾周り)やベントも少し跳ねた感じも見受けられる。



















シンプルに着心地が良く、雰囲気のあるお洋服。

それがTOKIHOの洋服だと思います。

それ以上でも以下でもない。

軒並みな表現しかできませんが、

「普通に良い服」を作り続けるんだと思います。

納期設定は普通でなく、12月納品というアパレルでは

異例中の異例である納期設定には少し驚きますが、

セールをやらないお店にとっては、大きな問題ではないの

かもしれません。

これから来る寒波に、お勧めのコートです。

















2021年1月8日金曜日

safujiさんのミニ二つ折り財布

インスタで動画を配信しているsafujiさんのミニ二つ折り財布は、

本日、夜7時前後には通信販売ページに更新いたします。

こちらでも動画をご覧いただけるようにいたしましたので、

どうぞご覧ください。








色展開は、グレー、グレーカーキ、グレーブラックの3色で、

ミニ長財布 for annabelleと同じ色展開です。






















アナベルでも昨年からpaypayを使えるようにしていますが、

自身でもバーコード決済を使うようになり、お財布に対する

需要は変化したと感じています。

「絶対に長財布派!」だと言っていた5年ほど前からすると、

今はsafujiさんのミニ長財布にとても満足していますから、

自分的にはすごい変化です。



























グレー

















グレーカーキ


















グレーブラック


















動画にもあるように、タテ使いを想定した小さな二つ折り財布です。

小銭入れ部分のスナップを外すと、カード入れが2か所と小銭スペースが

いっぺんにパタッと開く、こちらも見やすいと感じるお財布です。

カードは、1か所に5~6枚程度入れて限界でしたので、

10枚~12枚程度が入れられると考えてください。

小銭は、全種類を合計20枚程度入れています。

safujiさんのお財布を使い始めるとわかりますが、

小銭スペースがとても見やすいので、小銭はあまりたまりません。

こちらは十分なスペースと言って良いと思います。

写真上側が仕切り付きのお札、レシートスペースです。

こちらもレシートを5~6枚くらいお札を5枚入れていますが、

ものすごく余裕を感じます。レシートはそこそこたまっても

締まるかな、と感じますが、仕切りが簡易的ですし、

これを使うことでレシートや小銭を貯めすぎないようになると思います。

使う前に気になって仕方なかったことが、使ってみたら

不思議なくらいどっかに行ってしまうもの。

safujiさんのお財布は、本当に使用感にこだわったものばかりです。

その点はご安心ください。