2022年12月24日土曜日

もっと軽やかに。もっと楽しく。

今のファッションのデザインは原型を辿ると何らかの「ユニフォーム」に

辿り着くことが殆どではないでしょうか。1900年前後からヨーロッパでも

女性が様々なスポーツをはじめとする娯楽へ積極的に参加するように

なると、それぞれのシーンに相応しい装いが必要になってきた。

そういった生活様式の変化から少しづつ変化を遂げてきて、

オートクチュールから既製服中心に移行し始めたのもその頃からです。

今日は原型が明らかなジャケットをご紹介しますよ。





































FACTORY
カンフージャケット
¥38,500(税込)

その名の通りカンフージャケットをモチーフにしたデザインです。

僕も本格的なカンフージャケットがいったいどんなものなのかを

知らないので、元ネタとの比較ができないのですが、、。

ここ数年、古着屋さんでも刺繍入りのジャケットを多く見かけたり、

大人のファッションではカンフーシューズが爆発的な人気ですね。





















マオカラーとか、スタンドカラーとか言われる襟ですが、

きちっと留めるかどうかでカンフー感が出たり出なかったり。





















脇に大きな前後差のあるスリットは、きっと本物のカンフージャケットには

ないディテールでしょう。また生地は少し前にannabelle別注でご紹介した

wool/cottonと同じ素材です。肌に触れる部分はコットン。外側はウールです。





































もう一色はブラックです。

ブラックはステッチが配色になっているのが目立ちますね。

所々、素材の特性上ステッチが埋まっています。

かっこいい。





















カンフーグッズはジャケットもシューズもパッと見て可愛いですよね。

女性が反応するのがすごく良くわかる。ユニフォーム直球なデザインは、

ユニフォーム感が出ないように取り入れるとおしゃれに磨きがかかります。

ということでスカートとワンピースに合わせています。





































グレーはSUSURIのスカートに合わせてブーツを。

インナーにはFACTORYのリブセーターを着ていますが、

真冬の早朝や夜はこれでは寒いに決まっていますから、

先日もご紹介した例のアレが活躍します。






















ASEEDONCLOUDのケーブル編み大判ショールです。

これはもはや一つのアウターだと思っても差し支えない。

薄手のアウターにこれを纏うことでおしゃれさが倍増しますし、

着方のバリエーションもあって楽しいアイテムです。

何より温かい。





















取り入れるのに少し通常のアウターやコートよりハードルは高いとは

思いますが、その分スタイリングが目を引きます。





















ブラックはオールブラックで。

下に着たワンピースは秋口にご紹介していた

maison de soilのコットンシルクのワンピースです。

秋口や春先はこれでストールでも使えばちょうどいい。

オールブラックのカンフージャケットはすごく好みです。

かっこいい。袖口の別布も効いていますよね。

グレーも同色で白いワンピースやスカートに合わせたら、、と

想像してしまいました。





















こういったジャケットもあらゆるブランドが作り続けることで

きっとファッションの一部になり、そのうち元ネタはぼやけてきて、

誰もが着るようなものになる可能性が出てくるのでしょうね。

スポーツシーンで言えば「スタジャン」もそうでしょうし、

「POLOシャツ」もそうでしょう。

ミリタリーシーンなどは数えきれないほどあるし、

民族服もある意味ではユニフォームなのかもしれません。

最初に着はじめた人たちがどの時代でも「おしゃれさん」なのでしょう。

ココ・シャネルはその代表的な女性だと思います。

今この時代、必要なのはもう一度そういった冒険心のある掘り起こし

であるような気がしています。





















前衛的なファッションは必ず社会に刺激をもたらし活力になります。

それは洋服だけじゃなくて、芸能とか建築なんかも含めて。

情報が多くて早い今の時代にはとても起こりづらい現象かもしれませんが、

デザイナーやショップはそれを少なくとも目指すべきなのでしょう。

僕は今年の秋に娘の学校の文化祭を覗いた際に、そこにいた若者たちには

本当に刺激をたくさんもらいました。みんな色々な形で自己主張しているし、

1聞くと自信に満ち溢れた顔つきで10返ってくる。何より楽しそう。

アヴァンギャルドな何かは、きっとそんな環境から出てくるんでしょう。





















こちらの大判ショールは本日の通信販売ページにカンフージャケットと

併せて更新予定です。詳しい着方や大きさ、形はそちらでぜひご覧ください。

人類最初の衣類は世界各地の文明でただの四角に穴を開けたことから

始まっています。そんな時代をもう一度見直すのもありですよね。

こちらのショールも、僕らがご紹介している方法以外で素敵に使える

方法があるかもしれません。ぜひ開拓してみてください。

もっと軽やかに。もっと楽しく。



2022年12月23日金曜日

一生ものになりますように。

SP(エシュペー)デザイナーの赤丸さんといえば、、

最もデザイナーに見られないデザイナーとして自他ともに

認めているところだと思います。その点においては聞けば聞くほど

楽しいエピソードがたくさん出てきますが、実は赤丸さんには

ファッションデザイナー以外にも活躍の場があるのです。

少し近い職種ですが、彼はテキスタイルデザイナーとしての

側面も持ち合わせています。

元々コレクションデザイナーとして活動していた時代から長く、

生地産地の機屋さんと密に関わる中で、一緒に企画を出し始めたのが

きっかけで今も続いてるそうですが、SPの洋服作りには彼のその

キャリアが大きく貢献していると思います。生地のことを喋り始めると

ますますファッションデザイナーに見えないほど楽しそうに話します。

毎回、いくつかオリジナルファブリックを手がけていますが、

今回はこちらのコート地がそうでした。
















SP(エシュペー)
ステンカラーコート
Beige ¥104,500(税込)

お値段に少しひるみますよね。お店でもそうです。

すごくシンプルなのに存在感があるので皆さん気にかけてはくれるのですが、

お値段を見て驚きます。普段から高い生地や洋服を触っている僕ら洋服屋のような

人たちは、触って組成を聞いたらある程度のお値段は覚悟しますが、お客様は

驚く方が多くて当然かもしれません。

そうなんです。彼の作るオリジナルファブリックはいつもそうですが、

面白いほど玄人好みで伝わりにくい。。












今回の生地は、経糸にウールの双糸と単糸を引き揃えて緯糸にリネンを

使用しています。しかも織り上げたのはドイツ製の古いシャトル織機、

ションヘル織機です。尾州や一ノ宮など、国産の高級スーツ地などで

使用される低速のシャトル織機です。現代の大量生産向けの超高速織機と

比べると、1日に織り上げる量は10分の1程度とも言われますが、

ゆっくりと織り上げることで、原料に負荷をかけず、空気をしっかりと

はらみながら織上がるので、仕上がりがふっくらとした、ヴィンテージの

ような風合いに仕上がるのです。

お客様も「何か違う」「何かいい」と思って手に取ってくださっているのだと

思いますが、まさに生地へのこだわりが滲み出ているのかもしれません。












袖付けは一枚袖のラグランスリーブで、脇下には腕周りが動かしやすい

ように小さなマチが施されています。












フロントは比翼仕立てのボタンです。












コートの前部分に煽りどめのボタンが見られます。

後ろのベントには付いているものも多いのですが、前は見かけません。












外した状態。












付けた状態です。





















後ろのベントもこのように。





























ブラックです。

必要最小限のミニマルなデザインがクラシックな雰囲気をさらに

高め、この生地の存在感を引き立てているように思います。

経糸のウールの軽さに、緯糸のリネンの重さが加わることで

程よいドレープ感が生まれ、着れば着るほどにしっとりとした起毛感が

より一層の上質な風合いをもたらすことでしょう。

100年以上前の織機で織り上げた素晴らしい生地は、まさにヴィンテージが

現代に蘇ったかのような迫力を持ち合わせています。












明るめのベージュは上品なフラノのパンツに合わせました。

インナーの明るい色もあって、春のような雰囲気もありますが、

半分近くリネンの入った軽めのステンカラーコートは、

冬よりもむしろ春の方が活躍するかもしれません。












色も素敵です。明るめのベージュは、冬から春まで通して着続けられる

上品なカラーではないでしょうか。












僕が個人的に気に入っているのは横からの袖まわりの仕上がりです。

一枚袖ラグランは肩のあたりをスッキリ見せるのが難しいように

思いますが、生地とのマッチングもあってとても綺麗です。

















春は真っ白のTシャツに着てもカッコ良さそうなコートですよ。

ごめんなさい。もう頭が半分春に傾いておりまして。。












ブラックです。

ブラックはデニムやチノカラーでもかっこいいかと思いましたが、

シックで上品にオールブラックでまとめました。しかもワンピースで。












年を重ねても素敵に着ていただけるようなスタイリングです。












前を閉めて。

赤丸さんは、初めてコレクションを拝見した時から襟に特徴と癖のある

デザイナーさんだと感じていましたが、これだけシンプルなものを

作っても、やっぱり襟には雰囲気を感じます。

閉めても開けてもかっこいい。












僕のクローゼットで最も長く活躍し続けているアウターは、イギリスの

某有名ブランドのもので、もう20年近く愛用しています。

その次に長く着続けているのは、お店を始めた際に購入したHonnteの

裏地付きのショールカラーコートです。ちょうど10年着ています。

その2つは両方冬のコートではあるのですが、見た目もスタイルも

全く異なりますし、着る季節も微妙に違います。

Honneteのショールカラーコートは薄手で羽織る感じで着たいので、

今くらいまでは着ますが、1月、2月は着用回数が激減します。

でもそれでいいかなと思ってコートは買っています。

そればかり着てしまうとコートの寿命は短くなりますが、数着の

お気に入りがあることで、その全てが一生ものになるでしょう。

SPのこのコートも、誰かの一生ものになりますように。












2022年12月22日木曜日

上質な手仕事服

お店に並ぶほとんど全てのお洋服は、既製品とか量産品と括られます。

いわゆる工場で複数生産するものは、生産数が10点でも1000点でも

量産品、既製品となるわけですが、 ここ数年、インドの手仕事などが

注目を集めたこともあり、量産品の中に従来の既製服にはないような手仕事を

織り交ぜた中間的な商品が少し増えてきたように感じています。

今日はそのようなブランドの先頭を走る、先駆的デザイナーのお洋服、

「khaki & co(カディーアンドコー)」から、まさに手仕事が光る羽織コートの

ご紹介です。











Khaki & co
KHATMA ウールショールカラーコート
¥90,200(税込)

お値段に少し戸惑いながらも、、

ものすごく好みの素材、デザインでしたのでお取り扱いをいたしました。

サイズは2サイズあり、155cm前後の方はS、165cm前後の方はM

といった感じです。そういうと、160cmは?という質問が頭に浮かびますが、

これに関してはSでよろしいかと思います。












デザインは非常にオーソドックスなショールカラーデザインです。

しかし要所要所でデザイナー、ベス・ニールセンのセンスが光ります。












裾の端に黒の別布が見えますね。こちらは一重なのですが、

裾まわりと襟裏、袖口裏に黒の別布があしらわれています。

このような端々に見返しを作ることで、しっかり感や高級感が

確実に生まれます。





















こちらが袖裏です。












こちらが襟裏で、ネックの裏側まで同じように続きます。





















後ろ襟の割れたスプリットが可愛らしい。

裏が付くことで、襟全体がふっくらとする反面、

着用するとラフにそり返り、ブラックの別布が見え隠れしたりします。
















そり返っていますよね。

こんな感じで、基本的にラフな仕上げのデザインです。












そして何よりの特徴はこの生地です。

手つむぎ、手織りのウールです。

ざっくりとして着るほどに出る味わいが十分に想像できる素敵な布地。

ウールですから起毛して、少しふんわりとしてくるのでしょうが、

経年変化を辿っても常に上質感のあることが伺えます。












今くらいの気温でしたら、ストールを巻けばアウターとしても

活躍します。インナーにウールのワンピースやセーターを上手に

使っておしゃれを楽しんで欲しいお洋服です。

























僕はワンピースやスカートに合わせるのがいいかな?と想像して

展示会で見ていましたが、khadi & coのフランスのお店のスタッフの

方たちは、カッコよくワイドストレートのパンツなどで合わせておりました。

ということで、、先日追加でパンツでも撮影を。












FACTORYに別注したコットンウールのワイドパンツに、インナーは

ゴーシュのアルパカウールのタートルネック。












今の時期はこれでストールを巻けば日中のお出かけなんかは

十分かとお思いますし、車での移動が多い方は問題なしですが、

この後の最も寒い1月、2月にもこういった薄手のアウターを

楽しむために何かないかしら?

と考えていたところ、、ありました。












ASEEDONCLOUDの変形ショール。

さまざまな使い方を楽しめるショールは、このような

薄手のアウターと合わせると最高におしゃれ。




















ショールのように掛けてシンプルに使ったり、

ポンチョのような感覚でコーディネートができたり、

また、ウェストでキュッと結いてお洋服のような感覚で

着ていただける楽しいショールです。


先ほどのワンピーススタイルに組み合わせてもかっこいい。

こちらは、明日か明後日にはご紹介できそうです。

楽しみにお待ちください。