2019年11月15日金曜日

はしり・しゅん・なごり

私が10代のころには、どこのお店に行っても、

既製服ではきれいなお洋服が並んでいるのが当たり前でした。

ジーンズは生(なま)の固い状態から手にして履きこみ、

ボロを纏いたければ古着屋へ行く。

そんな中、いち早く「ボロ=あじわい」というような趣向を

ファッションに取り入れた人たちがいます。

何度もご紹介していますが、私が勝手に「代官山の開拓者」と

呼んでいる、聖林公司(セイリンコウシ)。

ハリウッドランチマーケットをおよそ45年前に代官山の

あの場所に築き、当時から洋服を海の砂浜に埋めたりと、

様々な可能性を探っていたと聞く。

今日はそんな彼らのコートをご紹介します。





















BLUE BLUE JAPAN
かご染めコート ¥48,000+tax

デザインは、ミリタリーのフィールドコートを簡素化した

シンプルでサイズ感の可愛らしい素敵なコートです。

いわゆる「モッズコート」のイメージが近いでしょうか。




そして大きな特徴は、このしわ感を残したムラのある染色。

「籠染め」と呼ばれる手法で、その名の通り籠の中にキュッと

押し込んだ状態で染め上げていくため、生地の表面にこのような

しわ感が出てくる。しわは消えません。















さらには、少しわかりにくいのですが、

ネイビーのライトメルトンに、ブラックの染料を使って

染めているため、光にあててよく見ると、味わいのあるムラ感がある。















襟元は、やや高めのスタンドカラー。

今年はシャツやブラウスでノーカラー、バンドカラー、

小さな襟が気になっておりましたが、こちらのコートも

襟元のすっきり感と身頃のゆったりとしたAラインのバランスが

とても気に入りました。















ポケットは実用性のあるスナップ付きの大きなポケットが2つ。















フロントは太めのジップを採用し、ミリタリー感が溢れます。

そのジップを覆い隠すようにスナップボタンで留めて着ていただける。















けっして地厚な生地ではなく、軽いウール素材ですので、

裏地がしっかりついてちょうどいい。

軽くても温かいコートに仕上がっています。















背面の裾中心には、スリットのような刻みのデザインが

施され、ミリタリーの要素を残している。















よく見ると、背面にドローコードの入るステッチが

見られるのですが、実際には特にひもが入っていることもなく、

表面のデザインを残す形となっています。

女性が着ることを考えて、いい具合にその痕跡を残したディテールです。





















ふんわりパンツのホワイトに合わせて。

前をしっかり閉めて着ています。















サイズ感は大きめですが、籠染めのふっくらとした

表情もあって、とても女性らしい素敵な印象です。















前を開けて羽織った感じ。















首元もすっきりしたデザインですので、

ストールとの相性も探りたい。















今回はミリタリーの雰囲気とも相性が良さそうな

maison de soil のカーキ色の大判ストールを。

からし色のラインも効いています。





















ジーンズを履くのが不良などと言われるような時代に、

すでにジーンズを履くことは当たり前で、さらには

その未来の形を日々模索していた日本のカジュアルファッションの

立役者である聖林公司が率いる中心的ブランド、「BLUE BLUE JAPAN」。


かれらのコンセプトの一つには、和食の世界で用いられる

「はしり・しゅん・なごり」を大切にしたいという考えがある。

洋服に置き換えて考えてみると、「はしり」は誰よりも早く新しい

何かを発信したいという気持ちや、そのための活動を大切にしたいという気持ち。

「しゅん」は、ファッションをやる以上は、その時の旬をしっかり

提案したいという消費者目線での活動や製作。

「なごり」は、旬を過ぎたものからも何かしらの発見を求め、

旬を過ぎたからこその喜びを見出す心。

温故知新にも似たようなことなのかもしれませんが、

これをしっかりとやり抜くことは、今のファッション業界では

とても難しいことは確かです。

だからこそ、なにか期待してしまう人たちでもある。

皆様も「はしり・しゅん・なごり」を意識してみてはいかがでしょう。