2019年4月30日火曜日

スレスレ感

短所と長所はとても近い関係にあるものですね。

人の性格などもそうですが、洋服のデザインもそう感じます。

一見難しそうな出会いにこそ、新しい発見があるかもしれません。





















FACTORY

ペルーコットンストライプサークルブラウス

¥16,000+tax

こういった、ボタンがなくTシャツのようなデザインの

ブラウスは、デザインするのが難しいように感じます。

寂しくて何か足したくなってくる。

しかし、こちらのブラウスはそれをすることなく、

もの足りない感覚を埋めています。

それがお勧めしたくなったポイントです。

















まず目に付いたのは素材です。

ロンドンストライプ、、なんか新鮮です。

アナベルではなかなか提案したことがない柄物です。

しかもそれが超長綿のペルーコットンを用いた

しなやかで上質感のあるオリジナルファブリックならなおさらです。





















そして、Vネックのブラウスで、なおかつ

ビッグサイズではないところ。

丸首の提案が多いアナベルですが、V ネックが嫌いなわけではありません。

ガバっと開きの広いVネックが苦手なので、こういった天幅の狭い

奇麗なVネックはあったら嬉しいところです。

バストは決して大き目ではありませんが、ダーツを取って

前身を剥ぐことで立体的なデザインに仕上がっています。





















最も特徴的で、短所にもなりえる極端な袖のデザインは、

肘部分を大きく膨らませ、カーブを付けている。

さらには、少し袖丈は長めです。

実は展示会場で試着をしてもらったとき、、

「ちょっと腕のふくらみがありすぎて、たくましく見えかねないな。。」

そう感じたのが正直なところでした。

しかし、それを見ていたデザイナーさんが、そっと近寄ってきて、、

「あ、、その袖のふくらみ、修正します。ちょっと膨らみ過ぎて。」

「1cm程度、削ろうと思ってます。」と。





















こちらはブラックです。

たて糸の本数を変えることでストライプに。

ブラック×ブラックのストライプ。

たった1cm程度の修整で、こうも印象が変わるものかと驚くほどの変化です。

まさに短所が長所に変化した瞬間を見たような。





















ペルーコットンのシリーズは、アナベルでは

この2色展開でご紹介しています。





















一般的に腕の短めな妻にはやや長めですが、

それでもほぼイメージ通り着られていると思います。

手の甲が隠れるくらいがイメージみたい。















妻ですと、それより少し長くなりますが、

見た目にはかっこいい。

袖のカーブやふくらみも、サンプルで見たものとは大違いです。















少し後ろに抜いて着ていただくくらいで肩のあたりも安定します。

もちろん、体系で少し変わりますが。。















着丈は決して長くない、どちらかというとブラウスとしては

短めな方だと思いますが、スカートにしっかりとタックインも可能です。

完売しましたが、susuri のマーチスカートに合わせて。















ネイビーのスカートにロンドンストライプのブラウス。

この文字だけ追っていくと、とてもトラッドな硬い印象の

スタイリングを想像しますが、全くそうなっていないのは、

個々のデザインの力です。

シンプルなスタイリングほど、

ちょっとしたデザインの変化が必要不可欠です。





















ブラックストライプは、TRAVAIL MANUEL の

久しぶりの新作お気に入りパンツに合わせて。















FACTORYは、ニットが得意なことでも有名なブランドです。

秋冬にセーターを買っていただいているお客様もたくさん

いることでしょう。

このブラウスには、まるでセーターを着ているかのような

滑らかなカーブと柔らかさを感じます。

それがこのブラウスの一番の特徴かもしれません。

着ている本人は、実にサラサラですが。。















ワイドパンツで合わせても、すっきりと収まる

丈感も扱いやすい。















かなり薄手のコットンで、今時期から初夏、梅雨、

梅雨明けから夏本番の7月中旬辺りまで十分に着ていただき、

コットンで季節性のないストライプ素材だけに、

もちろん秋口にも着ることでしょう。

上からパーカーやジャケットを羽織ってもサマになる。















袖をまくっても、肘のふくらみのあるデザインが生きています。

短所が長所に変わるとき、それはデザインの個性がいい方向に

転換した瞬間でした。

スタイリングにも同じようなことは良くあります。

驚くほど小さなことで嫌いが好きになることもあり得るかもしれません。

そのスレスレ感が、意外にオシャレなスタイリングを

つくるポイントでもあるように思っています。

少し癖のある袖のデザインをぜひスタイリングのポイントに。


<暮らしとおしゃれの編集室>















暮らしとおしゃれの編集室」で、連載ブログが更新しています。

今回は、「ふたりの方程式」という題名でusual(ユージュアル)

というブランドのダブル釦ワンピースをご紹介しています。

通年着ていただける、実にお勧めのワンピースですよ。


パンツは昨年も大好評でした、ぶかぶかパンツ。

バッグは巾着が大人気で完売したKHOHi のエゾシカのショルダー。

くつは、相変わらず良く使う、R.U. のJILL(ジル)。

ぜひご一読ください。







2019年4月28日日曜日

素敵な日々を紡ぎましょう

のんきにいつも笑って暮らしてゆけたらどんなに幸せか。

現実の生活で起こる様々な笑えない出来事を

まるでなかったかの如く、舞台上から笑いをふりまく道化師。

今シーズン、susuri のコレクションテーマは、”pietra”。

フェデリコ・フェリーニの映画、「道」からインスピレーションを

受け、たくさんの素敵な新作が躍りました。

映画に登場する道化師(ピエロ、またはクラウン)が着ている、

ブカブカした衣装をイメージして構築したワンピースです。





















susuri

クラウンワンピース ¥48,000+tax

道化師の華やかさとチャーミングさを

susuri らしく絶妙なふくらみや切り替えを駆使して

形成した、今シーズンを象徴するデザインの一つです。
















デザインはさることながら、素材使いやディテールでの

別布使いにも注目したい。

表地は、80番単糸の平織リネン素材に、光沢感のある

シリコン加工を施したものになります。

見た目の華やかさだけでなく、表現したい丸み、ふくらみを

十分に叶えてくれる素材です。

シリコン加工は、高熱で溶けるため、アイロンがけはできません。

基本的には、家庭での水洗い洗濯がお勧めです。

また袖の切り替え別布部分は、張り感のあるメイン素材に

対し、とてもソフトで薄くしなやかなタッチ。

ラメが含まれているのも特徴です。





















釦にもラメ入りの素材が使用されています。





















いつも以上に力の入った釦量。

少し外して被るか、全部外して下から履くかです。





















前をはずすと、左前端には大きな持ち出しがあり、

反対側に付いている内掛け釦にしっかりと固定できる。





















このように。

着ることを考えると、細かなことだが、

トップス部分に安定感が増してくる。

また、しっかりとした衣装のような雰囲気もあっていい。





















袖はボタンをはずさなくても通るのですが、

釦が5つ並ぶ姿が素敵です。

袖の切り替えとカーブが絶妙です。





















ウェストまわりに施された切りっぱなしのタック。

こちらも美しい衣装を感じさせると同時に、

道化師の持つ愛嬌のようなものを感じていただける。

とにかく、、着たら素敵なんです。





















たくさんの素晴らしいディテールがありますが、

このネックのラウンドがとてもいいのです。
















袖の丸みが見頃に一体化したかのようなシルエット。















写真では伝わりませんが、張り感のあるシリコン加工の

生地だからこそ見られる、動作による布地の美しさ。





















ストールを足して。

真っ黒な中に、白や赤を足して。

ぼやけないコントラストのあるスタイリングで。















娯楽の少ない昔の人たちにとって、

楽しい動きと華やかな見た目、時におどけたり、

時にドキッとさせてくれたり。

そんなクラウンは、嫌なことも忘れられる夢のような時間を

与えてくれたのかもしれません。

そんな思いを込めて、クラウンドレスを着て、

素敵な日々を紡いでほしい。

そう願います。







2019年4月27日土曜日

異素材の妙

春夏のスタイリングにおいて、

異素材の組み合わせを考えることは、とても重要です。

秋冬の重奏感はなくなり、羽織っても一枚であることが

多いため、同系色などは特に異素材を組み合わせることを駆使したい。

今日は、そんな異素材の組み合わせを意識した、これから梅雨に向けて、

そして秋などのウィンドブレーカー代わりになるような、

素敵なコートのご紹介です。





















Blue Blue Japan

ナイロン草木染コート ¥32,000+tax

コートとは言っても、素材がナイロンの

とても薄手なものですので、これからの季節はもちろん、

梅雨時期や季節の変わり目に活躍するウィンドブレーカー

のような存在です。

















気に入ったのは、この素材です。

表面には、昨日ご紹介した東炊きのような細やかなシワ感が

あり、一般的なナイロンとは程遠い、しなやかなタッチです。





















ポケットは裏あてのステッチが効いたパッチポケットです。

ワークコートのような雰囲気を感じます。





















衿は小さなラウンドカラーで、第一釦まで

留めても素敵な襟に仕上がっています。
















裏地はなんと背裏、袖裏がすべてメッシュ。

お洗濯も可能で、乾きもいい。





















そして最も興味を引いたのは、2色ともナイロンの

天然草木染であるということ。

左のオレンジは、「ラックダイ」と呼ばれます。

インドのガンジス川流域に生育する樹木に棲む、

ラックという虫がいて、ラックが木に対して分泌する

樹脂を精製することでできる染料を「ラックダイ」といいます。

古来から伝わる染料で、通常紅色のようなものが多いようですが、

ナイロンに高温で染めこむことで、このような鮮やかな色を実現しています。


右のネイビーは天然染めではお馴染みのクチナシですが、

銅媒染で、とりわけ「クチナシブルー」と呼ばれる染料を使用しています。

茶系やカーキ系が一般的なクチナシですが、こちらも銅媒染で染め返すことで

非常に濃度の高いクチナシブルーを実現しています。





















昨日、今日などは寒いですが、

本来の4月、5月にはとてもちょうどいい羽織コートです。





















しかも薄手のナイロンで、超軽量ですし、

畳んだらものすごく小さくコンパクトです。

持ち歩きにも便利です。















こちらは下にインディゴのスカートを着て、

同系色で合わせていますが、異素材感が生きて、

全く重々しい感じはありません。















染料だけでなく、染色の仕上げも独特で、

ナイロンの艶感が生きており、シワ感もかっこいい。





















染色はしっかりと固着してはいますが、

念のため、お洗濯は当初は単独の手洗いがお勧めです。

様子を見て、お手入れをお願いいたします。















オレンジのラックダイは、リネンのぶかぶかパンツに

合わせてみました。















3サイズ(XS、S、M)あり、こちらはSサイズを着ています。

オレンジは、現状Mのみとなりました。















ベージュや白系など明るい色合わせがしやすく、

シンプルにホワイトのワイドパンツなどに合わせるのも素敵です。















クチナシブルーも同様ですが、

前を開けて羽織った際の見た目の軽さや

鮮やかさで、羽織ものとしての活躍も相当に見込めます。

ご紹介はもう少し後になりますが、

ノースリーブのワンピースもございます。

異素材の組み合わせをぜひ楽しんでくださいね。



2019年4月26日金曜日

洗練された美しさ

偶然性を帯びた自然な造形は、美しいに決まっている。

このスカートを初めて見た時から、

長い付き合いになる予感はあった。

初めて見てから5年以上が経った今もなお、

その時の感動が持続しているようだ。





















susuri

バルーンマーチスカート

off white pool grey navy の3色展開

¥28,000+tax

バルーンのデザインなのですが、裏地と表地を

縫い合わせる際に、表地をよじって付けている。

そこで生まれる波打ちや凹凸、アシンメトレーが

いい具合に調和して、やり過ぎない程よい個性を醸し出す。





















今回は以前にもご紹介した、タイプライタークロスの

「東炊き(あずまだき)」と呼ばれる染色の手法を用いた素材です。

高密度なタイプライタークロスですが、江戸時代から伝わる、

高温で炊き込むように染色するこの方法で、シャカシャカとした

感触は少なく、ソフトで張りがあり、どこかしっとりとしている。

そして、表面に付いた小さなシワ感がいい味わいとなっている。

こちらのシワは、アイロンなどをあてても消えません。

家庭洗濯ができますので、洗いざらしで着用してください。
















裏地が真っ白であるのに対し、表地はオフホワイト。

こう見ると、少しお分かりいただけるでしょうか。

ただ、キナリというほどの黄みはございません。

あくまで、白の一種にとどまったオフホワイトです。
















ネイビーは少しスレート感のある、定番的ネイビー。

落ち着いたトーンですが、しっかりと青味もある。

とても合わせやすく、初めてマーチスカートをご購入の方には

おすすめしているお色です。
















最後はpool Grey。

こちらはしっかりと淡く、白っぽさを持ちながら青味もある、

数年前にsusuri さんが別注したカラーです。

定番カラーをお持ちの方も多いと思いますので、

今回、明るめのカラーを2色入れてみました。

こちらもお勧めのおしゃれな色。





















素敵な3色展開です。

たくさんのコーディネートをご紹介したいのですが、

ゆっくりしているとなくなりそうでもありますので、

とりあえず、シンプルなスタイリングだけ。





















こちらは白っぽく見えますが、

pool grey。

薄い薄い、ライトブルーのような感覚でしょうか。

とても素敵な色味です。















TOKIHO の綿麻のシャツをタックインして、

シンプルなスタイリング。















よじることで、少しアシンメトレーになった裾は、

右側が少し長くなる。















左側が少し短くなる。

厳密に形成されておらず、お洗濯をするとわずかに

変化が現れるのもこのスカートの特徴です。

そして、洗っても洗っても、この素敵なニュアンスが

損なわれることがないのも嬉しいところです。





















こちらのTOKIHO のシャツは、少し長めであるのですが、

出してみても悪くない。















そもそも、通常の丈でもスカートを履いて、

シャツを出すというスタイリングは難しいのですが、

このスカートはとても許容範囲が広い。















スカートとは思えないほどのスタイリングの

幅広さを感じさせます。

着ていてもきっと楽しいはず。





















ネイビーもシンプルに。

FACTORY の袖に工夫のある、素敵なブラウスをタックイン。





















シンプルなシャツをタックインしているだけの

スタイリングですが、全体にいいメリハリがついてくれる。

妻も普段良く履いているスカートですが、

スニーカーでもサマになってくれる嬉しいアイテムです。















もちろん、キレイ目に着こなそうと思えば、

いとも簡単にできてしまうでしょう。





















そして、オフホワイトですが、

この写真が少し問題です。















とっても見えずらいだけでなく、

色がかなり白くなって見えます。

本来は絶妙なオフホワイトで、真っ白とはまったく

違った印象なのですが、こちらの写真ではそれが全く分からない。















通信販売では、こちらの写真は使いませんので、

こちらで雰囲気を見ていただいて、

色につきましては、通信販売掲載予定の物撮りの

写真を参考にしてください。















偶然性を感じる計算されたデザインは、

とても洗練された美しさを感じさせる。

初めて見た時の予感は的中し、これで何度目かは

覚えていませんが、ずいぶん長い付き合いになる。

さらに長く、たくさんの人に愛されるスカートになることでしょう。

機会があれば、もっとたくさんのスタイリングをお見せしたいと思います。