2022年8月12日金曜日

制作者の哲学

先日、久しぶりに帽子作家の佐敷さんと長時間お話をする機会がありました。

僕が靴のR.U.に行ったときに感じたことなんかをざっくばらんに話しながら、

佐敷さんは時折そこにある自身の作った帽子を手に取って、老眼の人みたいな

モノの見方でじっと何度も帽子を見て、たまにくるっと手元で帽子を回してみて

違う角度でまた老眼の人の動きをする。

これはモノづくりをする人に多くみられる動きかな?と思うのですが、

やっぱり客観視することの重要性をとてもよく知っているのだと思うのです。

そして、その美しさをもたらすのは、細部の完成度だということも。


僕はモノづくりを教わる学校や芸術や美術に触れる教育を特に受けてきたわけでは

ありませんが、ものをたくさん見たり、触ったり使ったりする中で、「佇まい」

とも言えるそこにポンと置いた時の美しさや存在感のようなものがいかに大事で

表現するのが難しいことなのかは、なんとなくわかっているつもりです。












今日ご紹介するSAFUJIさんも、完成したお財布を手に取って、

撫でるように革の感触を確認しながら、テーブルにポンと載せて

少し遠くから眺めて、また革の表面を見ては「ウンウン」と

納得したような表情を浮かべる。
















それはもちろん、「最終的にこう見える財布を作りたい」と言う目標や

哲学のような感覚を持ち合わせているからこそ気になるのだと思います。

そんなものを持ち合わせていない人は、どう出来上がったか?よりも

何個できたか?が先にきてしまうのだと思うのです。












僕はサフジさんとお付き合いしていて本当に感心するのは、

数年前から自分の代(だい)でサフジを終わらせたくないということを

真剣に考え続けているという点です。そして、そのために今何をするべきかを

考え、実行しています。












結局は部分的に技術を人に教えて制作活動を支えてもらいながら、

最も重要な哲学的な部分を理解、共鳴してくれる人材を待つ以外に

ないのだろうと思うのですが、こちらがただ待っているだけでも

そうはならないことも、彼は十分に理解して行動しているようです。

本当に尊敬できる制作者の一人です。





















「うちの財布は、こう、なんていうか、、ふっくらした表情に仕上げたいんです。」

初めて会ったときにそんなことを語ってくれました。

確かにサフジのお財布はふっくらしています。手に取った際に軽さとともに

実感できる感触の一つだと思います。
















(※今回はナチュラルの代わりに新色でグレーブラウンが入荷しています。)


小ささや、使い勝手が評価されるサフジさんですが、実は同じくらいに

モノとしての美しさや手触り、心地よさのようなところに強いこだわりを

持っている人だということは、初めてお会いした時に強く感じました。
















この先のお財布の在り方も、誰よりも執念深く考えていることでしょう。

そしてその思考こそがなかなか教えられない哲学を生むのだと思います。
















「safuji」が「SAFUJI」になったことについて聞いてみると、

やっぱり「継承」するための活動をする決意のようなものが

込められていました。お二人は本当にフランクな性格で、

「別に大文字にしよう!みたいな意識は全くありませんでした。むしろ、

絶対に選ばないというくらいの対象でした。でも、デザイナーからいくつかの

案を提示されて、何度も見るうちに選んだのがそれだったと。」

後からデザイナーに、「ビッグブランドはだいたい大文字です。」って

言われて、少し照れ臭くなったそうですが、自分たちのケジメ記念に

変えたブランドのロゴは、大変お気に入りの様子でした。













今回も新色を交え、たくさんのお財布が入荷しています。

入荷して10日ほど、店頭では販売していましたが、明日から3日間

お店はお盆の夏休みに入ります。

その前に、お財布全種を通信販売にもご紹介したいと思います。

商品的な詳細は、ぜひそちらでご覧いただけますと幸いです。




















 

2022年8月1日月曜日

とびきりの日常着

初めてご来店いただいたお客様に、

「生地がどれも素敵ですね。」
「いい生地ばかり。」

なんて言われると、とても嬉しくなります。
僕自身、「やっぱり生地が良くないとな。」と
思いながらセレクトをしているので、大切にしている部分を
褒められると嬉しいのです。

もちろん、今まで自分で買ってきたものがみんな生地が良いものばかりか
というと実はそんなことはなく、何だか生地はたいしたこともないのだけど、
ひたすらに物欲をくすぐるものもたくさんある。

アナベルでセレクトするものは、そのどちらの要素もあるといいな、、
という欲張りな目線で、基本的には展示会で選んでいます。
これもその一つです。




















khadi & co(カディーアンドコー)
ジャムダニ織チュニックブラウス ¥71,500(税込)

何度もご紹介をしているkhadi & coは、スウェーデン国籍の女性、
ベスニールセンによるファッションブランドです。




















現在、70歳を超えて現役で活躍する彼女は、1970年代のまだ誰も
開拓していなかったインドの手仕事をファッション界に広めた先駆的な
存在の一人であることに間違いない。





















小さなボタンは共布の丸いくるみボタン。




















手つむぎ手織りのカディーコットンでありながら、織の途中で柄刺繍を
入れていくインドの代表的な織物であるジャムダニ織の贅沢な素材を
ふんだんに使用したチュニックです。




















非常に薄手の上質なコットンですが、ところどころが二重になった
デザインで、透け感はなく、心地よく着ていただけるデザインです。





















民族的なデザインを踏襲しながらも、流石としか言いようのない
なんとも素敵で上品なデザインです。さりげないポケットも可愛らしい。





































1箇所に2本ずつ紐のついたカシュクールデザインで、
羽織などには使えない、しっかり留めて着るタイプのチュニックです。





















背面のデザインも凝っています。




















アーキュレイステッチのようなステッチデザインは民族的な
雰囲気を少し感じさせます。





















部分的に施されたラジャスターンピンタックがとても美しい。






































ダークインディゴという名の先染のネイビーは、インディゴ染では
ありませんので、色移りの心配はございません。




























とにかく気分が上がる1着です。
そして上質です。





















トップス肩周りは華奢なデザインで、袖は非常に長めです。
写真のようにクシュクシュとしても良いし、まくっても良い。




































モノトーンでシックなスタイリングはシンプルですが、
上質なチュニックの質感とデザインのディテールが際立ちます。





































ダークインディゴは少し太めのパンツに合わせて。





















「生地が良い」の筆頭にあたるブランドが khadi & coなのです。
私も長年パンツを愛用してきましたが、その素材の良さは
試着では全くわからない。着て洗濯を繰り返しながらじわじわと
ましてくる上質さです。

とびきりの日常着として、大人の女性にお勧めしたい1着です。




























2022年7月29日金曜日

汎用性と個性

お店には週に何通もの展示会の案内やブランドのご案内が届きます。

最近はメールで届くこともよくあります。そして絶対に僕は目を通します。

一目で気になることもあれば、5年間「どうしようか?」が続くこともある。

現在お取り扱いをしているASEEDONCLOUDがそうでした。おそらく5年以上

にわたり案内状を送り続けていただいて、こちらのタイミングで声を

掛けさせていただきました。今年の10月には、初めての展示も開催します。


その逆に、見た瞬間に「これは見に行こう」と思う展示会もあるのです。

「DELMONACO(デルモナコ)」の靴の展示会がそうでした。

ワンストラップのレザーシューズにたしか赤いばらの花が生けてある写真で、

気にかかったのはワンストラップのシューズが男性用しか作っていないと

いう点でした。(現在はレディースも作っています)

普通はレディースはあるが、男性用はないというアイテムです。

当時、すぐに気になって調べると、オーセンティックなイギリスのメンズパンプス

デザインもどうやら作っている。。これはますます気になる。

絶対にクセのあるオーナーが強いこだわりを持って作っているに違いない、

という期待を持って、すぐに展示会のアポイントを取りました。


今日はDELMONACOで再入荷をしているパンプスシューズのご紹介です。

たくさんの写真とともに、少しブランドについてもお話したいと思います。











DELMONACO レザーパンプスシューズ
¥44,000(税込)

初めて展示会に伺った際にはメンズしか存在しなかったこちらの靴を

まずは自分用にオーダーをして数ヶ月待って、じっくりと履いてみました。












スリップオンやローファータイプは昔から大好きで、さまざまな靴を

履いてきました。このタイプの靴で自分なりにポイントとして考えて

いたのは、「馴染んでゆるくなってきた時に、どういうパフォーマンスを

してくれるか?」でした。紐もベルトもない浅いパンプスタイプでは、

とても気になるポイントです。












数週間、たくさん履き続けて馴染んだ時、少し踵が浮く感覚が

ありながらも、窪みが踵を引っ掛けてうまい具合に抜けずに

綺麗に歩くことができる靴でした。

「これはいい」と思って、当時メンズしかなかったこの靴を

レディースで作っていただくことになったのです。












「レディースを作って欲しい」というリクエストに対し、作り手の花谷さんから

の返答は、「できる限りがんばります」という少し曖昧なお返事でした。

それから半年以上が経ち、僕も「作れなかったのかな?」と半ば諦めていたところ、

「お待たせしました」という連絡をいただいたのです。












話を聞くと、元々メンズのラスト(木型)しかなかったモデルで

レディースを作るとなると、数ヶ月で簡単にできるものではないと。。

その時初めて知りました。












マッケイ製法で作られたDELMONACOのシューズは、非常に軽く

足馴染みが良い、ソールの薄さもあってよくしなり、僕にとっては

最良のパンプスシューズとの出会いでした。もう3足色違い、素材違いで

持っています。当然、1週間の大半をこの靴で過ごしているわけです。












今回は、2色展開のうちブラックが久しぶりの再入荷となりました。

一部、すでに欠けてしまったサイズもございますが、ぜひこの機会に

ご検討ください。





















DELMONACOの花谷さんは、もともとは「ビスポーク」と呼ばれる

フルオーダーの背広を作る世界で働いていた靴職人でした。

つまり、フルオーダーで背広を作る人はシャツやネクタイも同時に

作り、そのスタイルに合わせて靴も作るのです。





















粛々と続く英国ビスポークの世界であらゆる個人オーダーをこなしていく

日々で、いつしか自身の感性を注ぎ込んだ靴を作りたいと思っても何ら

不思議ではありません。





















そんな思いが募って独立を決意した彼は、初めは馴染みのある

オーダースタイルで活動を始め、少しづつ量産へと移行したそうです。





















「オーダーを中心に靴作りを行ってきたことは、今どうのように生かされているか?」

そんな質問に対する答えは、「平均値を見つけるうまさが養えた」というものでした。

なるほど、靴にとってサイズ感覚は非常に重要で、お洋服ではデザインの自由度が

高く、ビッグシルエットからタイトシルエットまで幅広く存在しますが、靴は

そうはいきません。5ミリ刻みでサイズが設定された上に、同じ24cmでも

色々な24cmの方がいらっしゃる。ではどのくらいの24cmになるように

靴を作るか?ということを考えるのに、オーダーシューズで培った平均値は

とても役に立っているとのことでした。





















僕はスタイリングを作る際に、「ちょっとした普通ではないところ」を

作れるように努力しています。昔は雑誌などで「はずし」なんて言われて

いたテクニックなのかもしれません。





















つまり素直にスタイリングしたらこうかな?

の逆を発想する癖をつけています。





















その発想の癖でこの靴を見たときに、僕から見ると伝統的な

メンズパンプスをマッケイで作った素敵な靴なのですが、

元がメンズパンプスなだけに、そのままのデザインでレディースの

パンプスを作ったらきっと良い違和感を感じてくれるのでは?

そんな思惑がありました。





















そして出来上がったレディースパンプスは、想像以上に素敵で、

アナベルのあらゆるスタイルによく似合う。






























自分でも一年中履いていますし、

スタイリングにも一年中使用しています。





























しかしパンプスはフィッティングが難しいことも確かです。

万人に合うとは限りません。ただ、かなりの方にマッチするのでは

ないかとは思っています。






























妻はR.U.は全てサイズ37、ビルケンシュトックも37、日本のサイズ表記では

たいていの革靴が23.5cm、ナイキなどのスニーカーは24cmを履いていますが、

DELMONACOのこちらのパンプスは23cmでした。





















パンプスデザインですので、できる限り足の実寸に近いサイズで

履いてもらうような設計になっているそうで、通常の紐ぐつなどよりも

つま先の捨て寸(足が入らない部分)が小さいそうです。

つまり、足が結構前まできてしまっても良いように、つま先に

厚みを持たせたデザインになっているそうです。





















たしかに、新品の状態でかなり脇が張った感触がある一方で、

つま先は余裕がない中でも結構動かせる感覚がある印象です。

そして馴染むのが早い。





















前述の通り、少し大きめなサイズ感ですので、22.5cmからサイズ

展開はございますが、普段22.5cmの方に合うサイズがないというのが

現状です。サイズ選びは、普段の革靴よりハーフサイズ小さいものがお勧めです。





















こうしてみるとかなりたくさんのスタイリングに使っているのが

あらためてよくわかります。






























合わないスタイリングってあるのかな?

ないのかもしれません。





















そして先ほども申しましたが、ポイントは靴そのものにしっかりと

個性や存在感があることです。












靴によっては脇役に徹し、存在感のない、既視感のあるものも

多いかと思います。レディースのパンプスが並んでいるのを

靴屋さんで見たときに、最終的にどれも同じように見えてきてしまう

なんて経験はないでしょうか?












このパンプスは、そういった意味でも良いデザインです。

これだけ汎用性の高いデザインでありながらしっかりと個性は感じられる。

そして修理も可能で長く履いていただける。

アッパーの素材は若い牛革を用いたオイル分量の多いキップレザーを

使用しているため非常に足馴染みがいい。

ぜひこの機会に、お試しください。