2019年11月11日月曜日

ゆらぐワンピース

モノを作る時のデザイナーの想像力というのは、

つくづくすごいものだと、感心します。

才能、経験、ひらめき、粘り強さ、

いろいろ必要なのでしょうが、

楽しむということが一番大事だと思います。

見たこともないものを作ってみることの高揚感、

そしてそれをお披露目するときの緊張感。

susuri デザイナー斎藤さんはここ数年、全国の産地へ

自ら足を運び、様々な生地を生み出してきた。

今シーズンのこの素材は、今後のsusuriにどのようにかかわってくるのか、

とても気になるものでした。





















susuri
スケイルワンピース
¥48,000+tax

今シーズンのテーマ、「egg」の裏のあるインスピレーションの

源は、映画「shape of water」。

そのテーマから、今シーズンのデザインや生地の多くが

「水」に関係する要素を持ち合わせている。

デザイナーの頭にも、常に水の揺らぎや色合いがあったという。

このワンピースにもそれが詰まっている。















鱗からインスピレーションを得て起こした特殊な

オリジナルプリント。





















フロントの丸みのあるタブも鱗から発想したデザインに。

キュプラコットンの生地を用い、全体に揺らぎを表現していますが、

水の中で物体を見た時のような鮮明さに欠ける揺らぎを

表現するため、特殊な技術を取り入れている。





















もともと、ベースになった生地はブラックです。

まずそのブラックを少し残しながら図案に沿って抜染します。

鱗模様の入った部分がその対象となった個所です。

黒がうっすらと残った上から、ブルー系、グリーン系の染料を

入れてプリントを描きます。ここは注染と同じ技術です。















そうして出来上がった柄は、裏側に使われた下方の濃い部分。

実際に表に使用されているのは、より揺らぎがある裏側の上部のもの。

理屈ではわかりますが、このようなプリントができるところも

限られるそうですし、なかなかデザインまでの想像が難しい。















袖口はダブルボタンのシャツカフス。

ブラックのクルミボタンを使用しています。





















ポケットもございます。















こういうところも好きですよ。

今まで何度となく衿吊りを新たにデザインしてきた

susuri齊藤さんが、このワンピースに至っては、

衿吊りの痕跡を残して消すというデザインを施しました。

とても工場が間違えそうな、面倒なデザインですが、

らしさが詰まったアイディアかと思います。





















一枚でも着ていただけるのですが、

今回は重ね着でご紹介します。















こちらはフィンワンピースのチャコールに重ねて。















少し前後で傾斜の付いた前後差のあるデザインです。

裾周りの大きなワンピースにスッとした細い袖が美しい。





















もう一つはふんわりパンツに合わせました。

きっとNO CONTROL AIRの裾ギャザーパンツとも似合いますよ。
















白と合わせるとわかりやすいのですが、

遠目には鉄紺のブラックとブルー、グリーンが混ざり合う

まさに海面のような色と揺らぎが存分に表現されています。















背面のプリーツはinボックスでしまい込み、

衿吊りは気配を残して消え去りました。

開きの広いフロントデザインとは正反対なアシンメトレー。

ここにもデザイナーの哲学が感じられます。

冬にはタートルを中に着たりして、コートに合わせて着てください。

デザイナーの様々な思いを感じながら。










2019年11月7日木曜日

その視点で何を見て、何を作るのか。

「NO CONTROL AIR の魅力は?」って聞かれたら、

一番に頭をよぎるのは「天邪鬼」という言葉。

「みんながそっちに行くなら自分はこっち。」

という歌舞伎物の発想で、ファッション業界でも

一種独特の居場所を自ら切り開いてきたデザイナーだと感じます。

そして何より、個性的なスタイリングバランスに惹かれます。

その中心にあるのは、極端なシルエットやフォルムをみせる、

ボトムスの面白さにあるように感じます。





















NO CONTROL AIR
裾ギャザーパンツ ¥22,500+tax

今回は、3年前に自身で購入したお気に入りの素材が

リバイバルしたこともあって、嬉しい年になりました。

また色違いを購入済みでございます。















メランジ調のミックスポリエステルの生地は、

その見た目、厚み、張感、どれをとってもちょうどいい。

今の季節から履き始めたとして、私は例年このパンツを

4月か5月あたりまで履いている。

履いていても誰も秋物だって気が付かない。

何なら本人がそんなこと忘れて履いている。

とても長期的に活躍する素材感で、このパンツにぴったりだと感じます。















裾口にゴムが入り、シャーリングがかかるシンプルなデザイン。















やや太めのウェスト帯のゴムシャーリング。

ギャザーもあってとてもふんわりとして見える。















内側は靴紐で結わく仕様。





















色は左から、ライトグレー、チャコール、ブラウンの3色。















ライトグレー















チャコール















ブラウン















迷わせるための3色展開なのか。。

ブラウンは、やや光沢があってかっこいい新色です。





















サイズ展開は、XS、Sの2サイズ展開で扱っています。

メーカーではMまで展開がございますが、ユニセックスモデルですので、

アナベルではSまでのお取り扱いにしています。

妻はXSで着用しています。
















NO CONTROL AIRは、その名で活動し始めたのは2000年ですが、

その3年ほど前から、建築の道から洋服屋へと転身を図る動きを見せていた。

自分たちでデザインしたプリントTシャツを全国のセレクトショップを

行脚して売り歩いたそうだ。

その時代に、「オリジナリティ」の大切さや、ものつくりをしていく上での

重要な哲学を身に着けていくことになる。















2000年からNO CONTROL AIRとして活動を始めるも、、

とにかく暇な日々を送っていたという。

そんなとき、突破口を求めて参加した新人ブランドが集う

合同展示会に参加した際、人生においても、洋服屋としても

大先輩だと慕う、ゴーシュのお二人に出会ったそう。

「面白い服つくってるね。」って声をかけてくれたのが

嬉しかったことを覚えていて、ゴーシュの泉さんも初めて

声をかけた時のことは鮮明に覚えているという。





















当時は、お互いに暇で暇で、、

ブランドを入れ替えて、交換販売をして楽しんでいたそうだ。

ゴーシュが東京でNO CONTROL AIRを販売して、

NO CONTROL AIRが大阪でゴーシュを販売する。

「意外と売れましたよ。」ってゴーシュさんも懐かし気に振り返っていた。





















お互いに売れない苦しい時代をなんとかしのぎ、

5年ほど経ったころ、なんとなくお互いに忙しくなってきて、

その交換販売は終わったという。

そのころ、ユニセックスファッションや天然素材のナチュラル服が

世間では大流行していたのだが、天邪鬼な彼は(何度もこの話は

いたしますが)、化繊、合繊の世界に飛び込んだのだそう。

それが当時は斬新で、もともと持っているセンスも相まって、

誰でもない彼らのオリジナリティを確立することになる。















この、裾に向かって極端にすぼまったボトムススタイルは、

彼らのスタイルに欠かせない存在と言っていい。





















まだ世の男性のファッションはややきれいなアメカジスタイルが

主流であった頃に、中性的ともいえる男性ファッションのスタイルを

作り、さらにそのスタイルをユニセックスで女性にも落とし込むという、

当時のユニセックススタイルとはまったくタッチの異なるものとして

提案していたことになる。




























超情報化社会になった今、新しいものを生み出すのは

そうとうに困難だと思える中、相変わらず変わった視点で

洋服をとらえ、その挑戦の手を緩めることはない。















長い着丈から少し見える裾ギャザーも素敵です。




























ワンピースを冬に温かく着る方法。




























足元の存在感をいい具合に消してくれるので、

レイヤーを作りやすい。

FACTORY のヤクのカーディガンを羽織って、この上から

コートを着たら、真冬でも寒くない。















このスタイリングでこのパンツが入ることの重要さ。















世の空気に靄(もや)がかかればかかるほど、

彼らのような発想の持ち主には好機なのかもしれません。

だからこそ、目が離せないし、何か期待値は上がるのです。

ファッションにルールはないのですから。









2019年11月5日火曜日

『研究しなくては』

一般論は一般論であり正解ではないということを

彼女の活動を遠くから眺めながら、つくづく感じていたものでした。

6年前の夏ごろ、彼女が初めてお披露目した展示会に赴きました。

その時は様々な理由からお取り扱いには至らなかったのですが、

とにかく気になる存在であり続けていたことは確かで、

一般向けの販売会などにも足を運び、自宅用にいろいろと

買っては使ってみて、感心するのでした。

そしていよいよこの秋冬、お取り扱いが始まりました。





















coova(コーバ)
ポシャギ風スクエアショール
¥22,000+tax white、pink















韓国の伝統的なパッチワーク技法を用いた布地を

ポシャギといいますが、こちらは様々な織りを使い分けることで

あたかもパッチワークであるかのような布地に仕立てています。















coova の代表である瀬谷さんは、学生時代からテキスタイルの

研究に没頭し続けてきた、私からしたら相当な布地オタクです。

独立前の勤め先も、八王子で生地を作る会社に所属し、トップメゾンの

デザイナーに向けてテキスタイルの設計だけでなく、デザインから製作、

営業までなんでもこなす忙しい毎日を過ごしていた。















織物であることを生かした端の処理も素敵なデザインです。















ホワイトは切り替え部分でイエローを使っていて、

巻いた時のポイントになっていますよ。















織物は大きく分けて、「手で織る」か「機械で織る」か、

どちらかであるが、彼女は機械で織りながらその中間くらいの

仕上がりを常にイメージしながら設計しているといいいます。

だからなのでしょう。

このぬくもりは。





















白シャツにホワイトを重ねて。

125cm角のスクエアであるこちらのストールは、

三角形に折って巻き付けたり、羽織ったりできる。















細番手の糸を用い、WOOLとSILKをおよそ半々で織っていることから、

ほんのりと温かく、真冬はもちろん春先まで活躍するような素材感です。















同じくcoovaさんが一点モノで製作したこちらの

タッセルピン(¥8,000)を使って留めてみると、

華やかさが増してくる。

金工作家さんにピン部分から手作りして作ってもらったという

タッセルピンは、瀬谷さんが集めていたというアンティークの

ビーズとあいまって、とても雰囲気のある一品に仕上がっている。















お洋服の色合いがダークになる秋冬には、

とても嬉しい2色展開です。





















オフホワイトにピンク。















ブラックにピンク。

どちらもコントラストの出る組み合わせですが、

とてもよくスタイリングに馴染みます。















四方に施されたフリンジがふさふさとかわいらしく、

つけていただくと想像以上に存在感を感じます。





















スクエアショールですから、このように

軽く羽織るように使っていただいても素敵です。















赤いワンピースに重ねたりして。















coovaは、瀬谷さんの前職の社内で、同僚である

仲間数人で起こした社内ブランドが起源になっている。

相当な忙しさの中、やりたいことを実現するために、

当時の社長にお願いして、通常業務が終わった後にも織機を

使わせてもらい、ひっそりと夜な夜な「coova」を形にしていったそうです。















そんなある日、いよいよ形になってきた商品を発表しようかと、

ダメもとで作品展に応募したそうです。

そして見事に審査を通過した矢先、所属する会社が倒産します。


「日本の繊維業界に未来はない」

私が務めていたアパレル業界でもよくささやかれていた言葉です。

中国生産をはじめとする、海外生産の安価な商品が大量に出回るように

なった当時、そう言われても誰も否定できない切羽詰まった状況でした。

会社が倒産すると、当たり前のように、そしてしかたなく、

同僚やcoovaを一緒にやってきた仲間はバラバラになり、

それぞれ別々の道を歩み始めます。















しかし、瀬谷さんはどうにもあきらめることが出来なかったそうです。

周囲の人たちの反対を押し切り、一人で「coova」を続ける決意をします。


6年前、彼女がcoovaを続け始めた当初、縁あって数回お店に

立ち寄ってお話しする機会がありました。

その後もこちらから展示に赴いたりすることが続く中、

会話の中で彼女の独特な言い回しで、ある言葉を何度も耳にします。

それは、「研究しなくては」というつぶやきのような言葉。















瀬谷さんにとって、coovaを通したテキスタイルの製作は、

常に研究対象なのでしょう。

数学的思考と、芸術的感性の両輪があって初めて素晴らしい

テキスタイルは生み出されるのだと思います。

それが出来れば、日本の繊維業界にも未来はあるように感じさせます。

coova の素敵なストールが店頭に並んでおります。

ぜひ、ご覧いただきたいと思います。