2022年11月29日火曜日

「coova(コーバ)=工場」

annabelleでお取り扱いをするブランドの作り手は、拘りの強い

少し癖の楽しい方達が多いように感じています。

もちろん好意的な意味を込めてです。 

ストールを展開する「coova(コーバ)」さんも突出したこだわりの

持ち主かと思います。

美大在学中からファブリックデザインや織物設計を学び、就職先も

織物工場という筋金入りの布地オタクである作り手の瀬谷さんは、

布地に対する愛が強く、納品される際の宅配便の備考欄には、

「衣類」とか「ショール」とかではなく、「布地」と記載されています。

納品されるたびに少しクスッとなるのですが、当人はきっと大真面目です。

今シーズンも数種類の素敵なストールが入荷しています。
















coova(コーバ)
クレープショール ¥26,400(税込)

coovaさんのストールは全て作り手である瀬谷さんの設計による

オリジナルファブリックを用いています。数々のトップメゾンに向けて

服飾用の布地の製作を請負ってきた前職での経験を生かし、派手さは

ないものの、常に新しいことにチャレンジしている職人気質な女性です。












こちらは細番手の多色使いのチェック柄で、伝統的なタータンチェックの

装いですが、2種類のチェック柄が並び、クレープ加工と呼ばれる

全体に細かなシワ感が生まれる加工により、雰囲気よく仕上げています。

上から、レッド、ベージュ、グリーンの3色展開です。















ベージュ

地が薄いベージュで縦にブラウンのラインがいくつか見えます。

そこにネイビー、スミ黒と実は多色使いの細番手ですから

贅沢なストールです。そしてベーシックでありながら、昔から

ありそうでない柄を作っています。





























素材はコットンが45%、ウールが55%のウールコットン素材です。

まだ寒くなりきらない今時期から真冬も使っていただけるストールですよ。












端っこにピンクの糸を入れているあたりがcoovaさんらしい一捻りです。
















レッド

昔着続けていた、メルトンのバッファローチェックのアウターシャツを

思い起こすようなレッドのストールは、色数を増やさないことで

逆に少し独特な雰囲気を纏っているような気がします。












また、coovaさんのストールは、男性でも使えるような雰囲気の

ものがほとんどで、僕も3〜4点所持して長いこと愛用しています。

もし男性の方が見ていたら、おすすめですよ。
















グリーン

グリーンはまた多色使い。

しかもあまり見たことがない配色です。












グリーン、ネイビー、ワインレッド、、そして驚きのグレー。

こちらも派手さはないのですが、この配色にマッチした絶妙な

グレーが印象的です。目立たない4色目が必要だったということですね。

とっても素敵です。












布地を作る方法は、手で織るか機械で織るかのどちらかになりますが、

coovaさんの織物は、常にその真ん中を目指して設計するそうです。

だから、機械織にもかかわらずハンドメイドの温もりも感じるのでしょう。





















着けてみるとシンプルですが、しっかりとした存在感がある。





























秋冬にふさわしい色使いです。





















正直、どの色も万能な印象でした。

あとはお顔との相性はありますから、普段取り入れやすい

色系であれば間違いなく活躍してくれますよ。






























レッドが一番はっきりした色合いです。普段ブラックのワンピースや

トップスを多く取り入れる方などは、扱いやすいのではないでしょうか。

黒に合うということではなく(勿論合うのですが)、

黒が似合う人はだいたい赤も似合うという意味でです。


今日はもう1種類、ご紹介します。

coovaさんが数年前に開発した代表作の一つです。
















coova(コーバ)
ふたまたストール ¥22,000(税込)

こちらはブラウンです。

初めて見た時はテンションが上がりました。

縫って繋いでいるわけではないんです。ふたまたに織っているのです。












織っている途中でふたまたにすることで、結果このように

3つに分かれます。素材はウール59%、コットン37%、リネン4%です。











































素材の見た目はこの3種です。
















ネイビー

ネイビーにブラウンとグレーが混ざり合ってとてもシックな色合いです。











渋い。

でもこれくらいが馴染みがいいんです。

なんせふたまたなので。
































ネイビーというよりは、優しい紫のような印象のネイビーです。
















最後はグリーンです。

ボリュームはほどほどですので、こちらも男性でも使いやすいストールです。

ちなみに僕もふたまたストールは毎年使っています。












ブラウン、ネイビー、グリーンというと珍しさは感じませんが、

実際に目にするとなんとも独特な色合いです。

そしてどれも洋服に合わせた際のカッコ良さが際立つ3色です。












ふたまた部分はこちらです。

ちなみにこの意匠はcoovaさんの発明で、専売特許です。












すでに数年前に意匠登録済みです。















ブラウン
















ネイビー
















グリーン
















ブラウンは赤みの強い合わせやすく華やかさもあるブラウンです。












色々な色がチラチラと見えるのもこのストールの楽しいところ。

























ネイビーは最もコントラストのある組み合わせです。

フリンジのブラウンがとても素敵。






























色が分かれているので、こんな風にショール使いしても素敵です。





















小さく巻くとこのくらいの大きさです。

ボリュームは少なすぎず、大きすぎず。












ただ垂らすだけでもいい。

3色ともどことなく和装にも似合いそうなストールです。

着物にカッコよく合わせてみても素敵ですよ。


coova(コーバ)というブランド名の由来は「工場(こうば)」です。

瀬谷さんが工場に勤めていた際に立ち上げようとしたブランドが

coovaだったのです。立ち上げてこれからという矢先に、工場が倒産して

しまい、自然とcoovaの活動も尻窄みしていく中、瀬谷さんは一人でも

続けるという気概を見せ、周囲の反対をよそに独立して継続して今に至ります。

ブランド名に工場を選んでいるように、技術を持つ職人に対するリスペクトが

強い性分なのだと思います。一度展示会で拝見した織物のプログラムの

量が物凄すぎて驚きました。工場に勤めていて際には、とても大きな機械の

故障を直すのも職人の仕事だったそうで、機械いじりもできるとか。

coovaはこれからも淡々と黙々とした瀬谷さんの研究により、新しい織物を

生み出し、人々の暮らしに潤いを与える存在で在り続けるのだと思います。

2022年11月28日月曜日

モードの粋(イキ)

FACTORYは家族経営の小さなブランドですが、社長であるお母様の

パワーもあって、現状維持を望まないアクティブな精神が強いブランドです。

軽々に売れたものをリピートしたがらないし、常に新しいことに挑戦しています。

自社での素材開発をすると同時に、外の機屋さんと共同で素材を作ることもある。

通常、一メーカーが行う仕事量を大きくはみ出しているところが最高に面白い。

今回ご紹介するコートも、その典型的な商品だと思います。
















FACTORY
ウールヤブレビッグコート
モカ ¥51,700(税込)

このデザインの原型は、実は3〜4年前の春夏のコットンコートに

遡ります。当時コットン地厚な素材で春に展開していたコートが

そのうちに素材を変えてウールで秋冬に登場するようになり、

段々とその時代に合わせてマイナーチェンジを続けてきた。












袖は肘下だけのポンチョかマントのようなデザインは、多くのビッグメゾンの

デザイナーが代々気に入って作り続けるアバンギャルドでありながら、

実は長年ファッション界にあり続ける素敵なデザインです。

今回は素材に強烈な特徴を出しての登場です。












経糸が自社のモンゴリアンウール、つまりニット用の糸を用いています。

そして緯糸には布地用のウール糸を用いて織り上げた素材です。

しかも組織が変わり種で、「ヤブレ組織」と呼ばれる変形の綾織です。

平織より綾織の方が密度があって防寒性が高いため、冬のシャツや

コート、パンツなども全般的に綾ものが多く使われています。

その特徴が綾目という織組織により生じる斜めの線なののですが、

今回のヤブレ組織は綾織でありながら、見た目は凹凸感のある平織のような

見え方が出ることが特徴です。また、ニット用の糸を経糸で使うことにより、

ふんわりとした起毛感が心地よく出ています。程よい軽さと暖かさが、

さまざまな工夫により完成しています。












防寒よりも軽さを重視した一重のコートに仕立てていますが、

今のように気温が下がりきらない11月、12月中旬あたりは、

薄手のセーターに重ねて十分な暖かさを発揮しますので、

カーディガンを羽織るような気軽さでスタイリングを楽しむことが可能です。

また12月下旬に気温が下り、十分な防寒が必要になった際には、

内側のセーターを厚地のものにしたり、同じくFACTORYのヤクで別注した

ショートカーディガンなどを中間に入れることで、一重ですが真冬にも

十分に着ていただけるコートになります。












次なる特徴はこちらの素材です。

パッと見はレザーのように見えますし、実際に見ていただいている

店頭での販売ではレザーだと思っているお客様もいらっしゃいます。

それはきっと見た目だけでなく、触った感触もレザーのようだからでしょう。

簡単に表現すると、硬い素材です。手に馴染ませて、長年の経年変化を

お楽しみください。





















こちらのチンガードは取り外し式となっていますので、

片側だけ外したり、使わない方は取り外して着用してください。












ポケットも同素材で仕立ててあります。





















フロントは比翼でボタンが見えないデザインです。
















ブラック






















ブラックは同色です。













モカとブラックの2色展開です。






























モカは白と合わせて優しい色合いで。


















 




ふんわりと起毛したナチュラルな素材感とモードなデザインの

バランスが素敵です。












ビッグコートいうように、とてもサイズは大きなコートですが、

素材のドレープ感で見た目に膨らみなどは出てきません












前を外して羽織のように着るのもかっこいい。












インナーもFACTORYの昨年のリブセーターで、全身FACTORY。





















袖は肘あたりからチョンとついたデザインです。

リュックなどには不向きかもしれません。

背負うことは問題なく、見た目もかっこいいですが、

腕の上げ下げでコートの裾が上下に結構動くようなところがございます。

腕の上げ下げがなければ着用に問題のない範囲です。






























雰囲気抜群のブラック。

カジュアルな雰囲気のモカに対して、全く違う印象を放ちます。












モード感が欲しい方やかっこよくシャープに着たい方にはブラックが

おすすめです。逆にカジュアルに柔らかい印象で着たい方には

モカがおすすめです。





















パンツもブラックで黒のヒールを合わせてシャープな印象でスタイリング。












タートルネックに少しだけ色を差して。





















ワンピース×ブーツ、スカート×ブーツに合わせるのも

カッコ良さそうなコートです。

また、年齢を重ねてもずっと付き合っていける普遍性も感じます。

挑戦し続けるFACTORYの粋を感じながら着ていただけますと幸いです。