2021年2月28日日曜日

森のオクリモノ

「森のオクリモノ」

 

 父親譲りのわたしは、あまり上手に笑うことができなかった。


母の大切にしていたブローチを譲り受けた時も、その嬉しさを他所に、


ぎこちない「ありがとう」を呟くように発するのが精一杯だった。


母はわたしが7歳になる年、ようやく終戦を迎えようとしていた最中に、


世界中で流行した疫病のワクチンの副作用のため、記憶を無くしてしまっていた。


よく笑うショートカットの似合う母はわたしの憧れでもあったが、


もう何年も、あの頃の笑顔を見せていない。

 

「これ・・。」

 

検査入院の多い母を除くと、我が家には口数の少ない父とわたし、


そして最近祖母が他界したことで、一緒に生活を始めることになった、祖父の3人がいる。


ピアノを弾いていた私に、何かを思い出したのか、祖父が1冊のノートを差し出してきた。


それは古い時代の記憶の詰まったもので、初めの2〜3ページをめくったあたりで、


私の胸が音をたてて驚いた。

 

「これは誰?お母さん?」珍しく声を張った。

「そうだよ。昔からよく笑う子だった。。」

 

とうとうタバコをやめられずに今に至る祖父は、しゃがれた声で煙混じりに震えるようにそう答えた。


自分にそっくりな少女が眩しい笑顔でおもちゃのピアノを弾いている。


そして目を凝らしてみると、モノクロでもこれだとわかる存在感で、


胸のあたりで愛想を振りまいているブローチが見える。


いざという時には必ず付けていたそうだ。

 

しばらく自分にそっくりな少女の笑顔に見惚れていると、


祖父が昔経営していた国営工場の前で撮影されたらしき集合写真が目に入った。

 

「これは!?」

 

ゆっくりとした動作の祖父を少しせかすように聞いてしまった。


若かりし頃の屈強な祖父の隣にいるのがおそらく祖母であろうことはすぐにわかる。


聞いたのは、その前列で母の隣に座っている、当時の母よりも少し年上に見える少女だ。


胸には母とよく似た素敵なブローチを付けている。

 

「これはね、、妻の、つまり君のおばあちゃんの姪にあたる子だ。」


祖父の工場を手伝いに来ていたその女の子は、仕事の傍で、自身の先祖が残したという、


不思議な遺産の植物のカケラを使い、木箱に装飾を施していたそうだ。


ブローチも、その装飾の中の一つで、母はその子が作る物が大好きだったという。


戦況が悪化する中、姪っ子家族とは離れ離れとなり、以降会うことは叶わなかったのだ。

 

 

陽の光を遮るように木々が生い茂る道に踏み入ると、雨上がりの湿った砂利や、

草のこすれる乾いた音が、自身の頭に流れるピアノ曲と協奏し、

まるでそこが、不思議な世界への入り口であるかのように思えてきた。

 

母の記憶が戻ることを期待した祖父が終戦後に何度か訪れたという山中の古い工場跡に、


大人になった私は今、立っている。


当時、母とあの少女が働いていた作業場からファインダーを覗き、母の記憶を辿るように


シャッターを切っていると、壁に貼り残された1枚の古い写真が目に飛び込んできた。


それはいつか見た、かしこまった集合写真の続きにも見える、とびきりの笑顔で映った


二人の少女の写真だった。胸にははっきりとあのブローチが見える。


写真を剥がし、裏を返すと、幼い字でメッセージが添えてある。

 

『またきっと会おうね。』

 

決して豊かではなかったはずの時代に残されたその写真からは、


最高に幸せな瞬間を感じ取ることができる。埃を払って写真を元に戻し、


カメラを向けると、一瞬ファインダーに母の笑顔を感じ取り、


「ありがとう」という明るく優しい声が頭の中に響き渡ったのだ。

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

「おばあちゃん、、おばあちゃん!!」

気持ちよく揺れ動かされて、一瞬で現実へ引き戻された。

洒落た花屋を開業したわたしの孫から、たまに店番を頼まれるのだが、

あまりにも心地の良い空間と音楽に包まれて、昔を思い出しながら、つい

つい深い眠りについてしまう。

わたしの昔話を小さな頃から聞かされて育った孫は、様々な空想を巡らせ

て、面白いブローチを作っている。

「森のオクリモノ」という作品名で。



ー不思議の家系の物語ーAnother story

「森のオクリモノ」より




















今から4年前、「式典-shikien-」を始めるにあたって、

他の展示会でよく目にしていた花屋西別府商店に装飾を全面的に依頼した。

そして記念すべき1回目の式典では、西別府久幸の生花のコサージュを

予約販売という形で受注することにしたのです。


それが始まりで、以来、式典のたびにコサージュから変化を遂げ、

植物を使用したブローチの販売を期間限定で重ねてきた。


昨年の秋、初めて彼の個展をannabelleで行った際に、

3年間続けてきた式典のブローチを西別府久幸の作品として

販売し始めることとなった。作品名は、「森のオクリモノ」。

そうなると、彼が展示をする様々な土地で彼らの作品としてブローチが

販売されることになる。なんだかワクワクする。


ご存知の方も多いかもしれませんが、彼らのオリジナル作品には

それぞれに物語が添えてある。それが、「不思議の家系の物語」だ。


今回、「森のオクリモノ」が彼らのオリジナル作品になるにあたり、

私が、作品に添える物語を書かせていただきました。

物語とともに、たくさんの方々の元へ届けられるのは嬉しい限りです。

























今回も、通信販売をご用意しております。


式典のご予定のない方にも、普段使いのブローチとして


ぜひ付けていただきたい作品です。
























毎回、彼の作る装飾風景は春を伝えています。


日本人の営みは春の桜から始まりますが、


この式典は、その準備のための催しです。


良いイメージを持って始まりを迎えるために、


これからも続けていきたいと思います。


今回は、このような状況下でたくさんのご来店を


いただきまして、ありがとうございました。


皆様の式典が素晴らしいものになりますことを願います。










2021年2月27日土曜日

小学生を見習って

初めに言っておきます。

今回、式典の装いをできる限りまとめておりますので、

少し長くなっています。ゆったりした心持ちで見てください。

また全スタイリングを網羅しておりませんので、スタイリングは

通信販売ページも合わせてご覧ください。

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先日、息子が「秘密基地を作ってくる」

そう言って遊びに行きました。

「何?」と思ってどこで作っているか聞いてみると、、

僕が小学生の頃秘密基地を作っていた場所と全く同じ場所でした。

自身の子供たちの式典を来年に控えながら、

楽しんで、スタイリングをつくりました。

たくさんありますので、ゆっくりご覧ください。














NO CONTROL AIR
サイドスリットワンピース
black   ¥29,700(税込)

この時期に「式典フェア」を開催したきっかけは、

お客様が、「卒業式なんだけど何着たらいいかわかんない」とか、

「着たい服が見つかんなくて」とか。。

そんな声をこの時期にたくさん聞いていたことがきっかけでした。









「フォーマル生地」を専門に織り、世界のトップブランドからも

たくさん発注を受ける会社が日本の北陸地方にあります。

NO CONTROL AIRのこちらの生地も、そこで作っているものです。

こちらはフォーマルとはいえ、ソフトでナチュラルストレッチのある

カジュアルさを備えたものになりますので、

我々がまさに求めていた感触です。









バストから裾にかけて、少しすぼまったシルエットの

こちらのワンピースは、裾周りが広がりすぎず、

落ち着いた印象を受けることもあり、

「葬儀も兼ねたい」という希望がある方には、

真っ先にお勧めするワンピースです。









生地は「4シーズン」のくくりですが、ややソフトですし、

裏地がありませんので、真冬は少し寒いかもしれません。

インナーに温かいものを着ていただいて、

あとは上からジャケットを羽織るなどすると良いと思います。









葬儀では黒いジャケットを着ていただき、

ハレの日には、明るいジャケットを羽織るとまた印象が変わります。









こちらは、アナベルのオープン当初からお世話になる

TRAVAIL MANUEL(トラヴァイユマニュアル)さんのジャケットです。
¥26,400(税込) 3色展開

ポリエステル × ポリウレタンの素材は、ストレッチ性もありシワにならない。

裏地は滑りの良いキュプラ素材が付き、あらゆるお洋服に羽織っていただける。
















小学校、中学校の入学、卒業を実際に見た感覚では、

このくらいの装いの方が最も多いように感じます。









同じ形のネイビー。
















ネイビーは、「卒業式と入学式を兼ねたい」という方に、

ブラックよりもお勧めしています。

室内でみると、たいした差がないようにも見えますが、

やっぱりネイビーは、明るいのです。


ブラックも、装飾や上から着るもので印象は随分変わりますし、

そもそも黒を華やかに着れる人もいらっしゃいますから、

あくまでも平均的なお話です。

ネイビーの方が明るい分、みんなが明るいトーンに変わる

入学シーンでも使いやすいかと思います。
















NO CONTROL AIR
Aラインワンピース
black    ¥29,700(税込)

感じが似ていますが、対照的なワンピースです。

スリットはややストレートなシルエットであるのに対し、

こちらは裾が広がるAライン。

スリットが長袖であるのに対して、

こちらは7分袖。

ネックの丸首具合はほとんど同じ。









それぞれにいいところを持った、

仲良し姉妹のようなワンピースです。














シックな印象を狙った「black×black」のスタイリング。









上に着たのは、この春の式典から登場の新作ジャケットです。

一重のブルゾンのようなデザインですので、

もちろんカジュアルにもお使いいただけます。









NO CONTROL AIR
刻みブルゾン 
black  ¥28,050(税込)

背面のゴムシャーリングが特徴的で、パンツスタイルにも

ワンピーススタイルにもお使いいただけます。

後ほどパンツスタイルでも登場しますよ。














Aラインワンピース
navy  ¥29,700(税込)

スリットワンピースも、Aラインワンピースも2サイズ展開です。

「36=S」と「38=M」の2種類。

基本的に少しゆとりのあるデザインですので、

大きく違ってくるのは丈になります。

こちらのネイビーは、38の大きなサイズを着てもらいました。






















ドレスっぽさが欲しい人は、わざと大きいサイズを

選ぶのもありかもしれませんね。

モデルをお願いしている妻の身長は、155cmです。









後ろが僅かに下がる感じ。










一般的には、165cm前後ある方がこちらのサイズを選ばれます。



















上から、同じくNO CONTROL AIRのマカロニポリエステルの

やや光沢感のあるジャケットを着ています。

今年は少しジャケットの選択肢が広がりました。









カフェモカのような淡いベージュは、なんともいえず上品な色。

他にも白とブラックがございます。









続いてはこちらのワンピース。

NO CONTROL AIR
ウェストゴムワンピース
black  ¥34,650(税込)

こちらも葬儀と兼用で人気のあるワンピースです。

なぜだか、皆さんに「1枚で着たい」「ジャケットを着たくない」と

言われるワンピースでもあります。









確かにウェストのゴムの部分が見えなくなったり、

「全体のシルエットを見せたいのに!」ということでしょう。









ジャケットを着るとこの辺りのラインが見えませんから。

後ろ姿も褒められるワンピースです。









入学のシーズンは、天候にもよりますが、概ね一枚でも

大丈夫だと思います。明るい色のショールなんかがあったら最高です。

でも3月はまだまだ寒いので、、









着せちゃいます。

先ほども登場した、TRAVAIL MANUELの羽織ジャケット。

こちらはチャコールグレー。
















ボタンの全くない、羽織スタイルですので、

中心でVネックもウェストのゴムもチラ見せ可能です。









ボトムスは、ギャザードレープが降り注ぎ、とても美しい。

ジャケットを合わせても素敵ですよ。









navy

こちらのウェストゴムワンピースは、ワンサイズ展開です。

「38=Free」となります。

今回、カバンは意外にも、sono3のブラックをよく使いました。

革紐を二重にしてこのように持ったり、クラッチぽく持ったりして。









梅春はジャケットやコートを着て、

春は一枚で。









ネイビーには、アナベルのオリジナルジャケットを

着てもらいました。









こちらもシルエットは見えなくなりますが、

これはこれで素敵です。























まだ寒い3月は、上着とショールなどがあるとちょうどいい。









家にあるものをひっくり返して、

色々とコーディネートして遊んでみてください。









続いては、こちら。

セットアップ派の方に絶大な人気を誇るキュロットです。

一見、スカートのようにも見えなくないキュロットは、

S=ワンサイズ展開です。









丈は小柄な方が履いても絶妙なかっこ良さ。

よほどウェスト位置が高い人でなければ、

背が高い方が履いてもかっこいい。

幅広い身長の方がかっこよく履いていただけるデザインです。









前から見ると、スカートぽく。

横から見るとバギーパンツ。

ジャケットは、何度も登場する、

TRAVAIL MANUELの羽織ジャケット。









NO CONTROL AIR
キュロットパンツ
navy  ¥21,450(税込)









ネイビーは、マカロニポリエステルのジャケットの白に合わせて。















手持ちのジャケットに合わせたり、新たに見つけた

お気に入りのジャケットに合わせたり、

温かい季節にはブラウス一枚で着用していただける。

通勤にも気軽に使えますので、一つ持っておくと便利なパンツです。

「ジャケットは持っている」という方に、まずお勧めしているボトムスです。



















セットアップで揃えてもかっこいい。









ここでもsono3が何気に活躍しています。
























「一番無難なの!」ってあまり言われると悲しいのですが、

心の中で実はちょっとそう思っている方にはお勧めのセットアップです。

それぞれがバラバラでも活躍しますから。













そのジャケットのブラックです。

NO CONTROL AIR 
定番ノーカラージャケット
black  ¥39,050(税込)
















ブラックは今シーズンから登場のテーパーパンツに合わせて。









今までの細いスリムパンツに変わって登場したパンツは、

どなたが履いても太すぎず、細すぎず。

ちょうどいい個性を持ったタックパンツです。

おそらく人によっては、Tシャツを合わせてコンバースでも

かっこよく履けちゃいそうなシルエットと雰囲気です。






















NO CONTROL AIR
NEWテーパードパンツ
black  ¥25,300(税込)









小物次第で様々なシーンに順応するセットアップ。














ネイビーは、白いジャケットに合わせて華やかに。

ネック周りのシルクのストールは、透け感の美しい、

手染めのインディゴのもの。









高城染工さんのものですので、

色移りの心配はございません。

安心して華やかな場面でも活用してください。










なんとなく、、

ストッキングも変えて、赤系にしてみました。









ネイビーはもう一つ。

先ほど登場した、裾ゴムシャーリングのブルゾンをセットアップで。









しっかりジャケット感のあるノーカラージャケットとは

異なり、一重の軽さもあって軽快な印象です。









裾がラウンドして見える横姿も可愛らしい。

「首周りがおとなしい方がいいかな?」って感じまして、

一連の淡水パールのネックレスをつけました。









パンツスタイルのインナーシャツはずっとこれを着ていました。

昨年販売していたゴーシュのポリエステルシャツ。

シワにならないノンストレスなブラウスは、

お仕事や式典のシーンでも大活躍です。









ネック背面の雫型のデザインも美しい。

ゴーシュの定番の形です。














「服を着る」ということは、自身の今の気分を表し、

その集合体であるファッションは、時代を移す鏡のような存在です。


今回の式典フェアでは、前代未聞ではございますが、

「卒業式の日程がまだ出ていない」というお客様も多く見受けました。

戸惑いが多い式典になるかもしれませんが、できる限りお気に入りの

衣装を着て、たくさん笑っていつも通り主役を祝福してください。

写真を見ると、何年経っても思い出す式典になるかもしれません。


小学生の頃、駄菓子屋でお菓子を仕入れ、友人たちと通った

防空壕跡のある高台の公園に、自分の息子が同じように

通って秘密基地を作っていたことは、ちょっと心が踊る出来事でした。

そこそこみんなおしゃれで、昭和の子供とは大違い。

そこそこみんないい自転車に乗って、公園でもゲームなんかしていたり。

でもちょっと学校に顔を出したり、子供の話を聞いているとわかります。

彼らは昔の我々と同じく、ちゃんと小さなことに感激したり、

興味を持ったりしています。

きっと変わったのは大人や社会の方なんだと思います。


これからもたくさんのスタイリングを作り続けていくわけですが、

自分の中に「変化」と「不変」を楽しむ気持ちを持とうと思います。

社会やトレンドが変わっても実はあの人たち、芯の部分は変わってないね。

そんな小さくてもパワーのあるお店を目指します。

小学生を見習って。