6年前、当時たまに行ってお買い物をしていた、
青山の路地にあったセレクトショップで、
初めてTOKIHOのお洋服に出会いました。
長いテーブルを陣取って、かっこよくディスプレーされた
ワンピースを妻に買い、片隅でわずかにあったメンズコーナーで
自身のバンドカラーシャツを購入した。
あの時の高揚感は今も忘れない。
その足で、西荻まで赴き、poefu の柿本さんに見せて、
2人でいい服談議で盛り上がったのを思い起こす。
先日のコートに続き、妻がため息混じりに
かわいい×10だったワンピースのご紹介です。
TOKIHO
墨汁コーティングリネン千鳥ワンピース
black
コートと同じく、ただならぬ雰囲気を持つ。
濃いところと少し薄いところがまだらに
広がる生地の表情は、新品の既製服の持つ
佇まいではなく、新品ですでにアンティークの持つ
風貌を纏っている。
最近は、襟の存在意義についてよく考えるという
デザイナーの季穂さん。
考えているうちに襟先は後退し、
このような形になったという。
「衿の気配を少し消してみました。」
という説明がなんとも頭に残る言葉でした。
前身頃は比翼仕立てで、前開きのデザイン。
ロングの羽織物として着ても素敵です。
身頃が大きいのに対し、スッとした細身で奇麗な袖が
着てみるととても締りがある。
ワンピースとしてシンプルに。
前ボタンは、かなり下まで付いていますので、
前がヒラヒラ開くこともなく、
しっかりワンピースとして活躍します。
黒いショートソックスはevam eva の今シーズンの新作です。
細い袖があることで、ゆったりしたAラインが引き立ちます。
気配を消したはずの襟は、逆に襟という存在を
超えた何かになっている気もしてきます。
前を全開にして、羽織ものとして。
そろそろブラウスにリネンの羽織でちょうどいい、
ようやく温かさを感じる春本番。
コーティングはお洗濯で徐々に本来の麻の姿を
見せてくれます。
色合い、風合いの変化もお楽しみください。
着心地も抜群なTOKIHOさんの作る洋服は、
きっとジワジワとにじみ寄るような
満足感を得られることでしょう。
妻が昨年の秋冬に購入した羽織れるワンピースは、
つい手に取ってしまう1着になっていました。
生地も丈夫で高級感があり、おそらく昨年度、
最も着用した洋服と言って間違いないでしょう。
初めてお会いした時、3時間ほどお話が止まらなく
なったのですが、その際にこんなことを聞かれました。
「伊佐さんは生きづらくないですか?」
個性が強い方は、往々にして生きづらさを感じる
傾向にあるのだと思います。
その個性がいい方向に向かうように、
これからも素敵な洋服を期待したいデザイナーの一人です。