わたくしの時代、(昭和48年生まれ)おしゃれの
第一段階は、雑誌に出てくるモデルのスタイリングを
一生懸命まねることでした。
古着屋に入り浸っては、似たような服を探し、
サイズが合うものを漁る。
それを繰り返すうちに、オリジナリティーが生まれてくる。
「自分ならここは、こんなのを合わせるな。」みたいな具合に。
完全なオリジナルではないけれど、少し自分なりの空想が入る。
そのあたりから、第二段階なのかもしれない。
そうこうするうちに、雑誌の見方が変わってくる。
商品写真や色使いに素早く目配りするようになり、
いったん入った情報から、オリジナリティーのある
スタイリングが頭の中に浮かんでくる。
この段階までくると、周囲からは「洋服バカ」と呼ばれるようになる。
洋服バカと呼ばれるようになってから20年以上が経つが、
まだまだ、終わりなんか見えてこない。
GASA*のコレクションを目にするたびに、
本当にまだまだだと、思わずため息が出る。
GASA*
”宴の音色” ズロース ¥50,000+tax
これはまさに、スタイリングの想像から生まれたであろう
GASA*ならではのお洋服かと思います。
リネン生地を泥藍で一品ずつ手染めした、作品とも
言えるズロースパンツ。
ズロースという名前が付いているだけに、
股下がボタンですべて外れるデザインは、
昔の肌着を連想させる。
すべて、取り外すとスカートのような形になり、
スカートやワンピースの下にはいた時、
パンツの形とはまた違った印象のスタイリングになる。
今回は、パンツの状態だけでのご紹介となりますが、
こちらも機会があったら釦をはずして使ったスタイリングも
ぜひ紹介したい。
さらにはこの刺繍が気分を上げる。
泥藍染もあいまって、かなり雰囲気がいい。
ポケットもしっかりある。
もう一色あった、墨染は完売いたしました。
パンツスタイルでは、こんなすっきりとした
デザインのブラウスは相性がいい。
同じデザイナーの gasa grue のブラウスになりますが、
素材感は全く違います。
綿麻のシャキッとした、どちらかというとキレイ目な素材。
どこまでやり切れば、ズロースがパンツとして
成立するのか?
その想像は、はじめは難しいのでしょう。
でもどんなに始めは難しいことも、きっと慣れてきます。
GASA*のデザイナー、五十嵐さんはその範疇がとっても広い。
洋服屋が見て、本当にウキウキする。
薄手のリネン素材が二重になるり、
シャリっとした感触と、ふんわりした肌触りが同居する。
高密度な細番手の表地と、細番手でふんわりガーゼ織の
裏地というギャップが、その感触を実現している。
もちろんズロースとして、インナーで活躍させても
素敵です。
座ったときや、かがんだ時に覗かせるスタイリングの
脇役にまわったズロースは、もしかしたら最も
目に留まる、印象に残る存在になるのかもしれません。
チラッと見えたソックスがかっこいいのと同じです。
いや、、そのもっとすごいやつ。
実は以前からGASA*に存在したズロース。
暮らしとおしゃれの編集室でも書きましたが、
susuri さんのフルッタ―パンツを妻が愛用し始めてから、
インナースタイルの価値観が変わりました。
靴下もそうだと思います。
10代では洋服に手いっぱいで、靴下はどうでもいい存在でしたが、
スタイリングを自分で空想するようになった頃から、
どうでもいいどころか、とても重要な存在に変わってきた。
3足1000円か、セールでしか買っていなかったソックスも、
今では8000円くらいのものまで買うようになっている。
これは、長持ちするとか、素材がいいとか、そういった
ことだけではない。
自分の中で、靴下の価値観が変わったからなのだと思います。
このズロースパンツは、そんな心境の変化でバイイングしたパンツです。
もちろん、インナーだけでなくパンツとしても履いていただけますし、
インナーとしての活躍を考えると、夏場だけでなく秋冬も
ワンピースの下に忍ばせることができる。
そう考えたら、5万円が高くないような気がしてきたのです。
だって、、もしかしたら主役のワンピースより、
たくさん着用するかもしれないんですから。
しかもそれが、すごく気分の上がるものだったら、
毎日幸せですよ。