6年以上が経ち、アナベルのための革のかばん、sono(ソノ)を
作っていただくようになって、2年が経ちます。
「sonoを作り始めてからどのくらい経つだろう?」って思って調べたら、
体感的には4年くらい経った気でいたのですが、まだ2年でした。
あまりにも色々と一緒に話をして企画をして、サンプリングをして、
あーでもない、こーでもない、、そんなたくさんの時間を
共有してきたせいか、その時間は実際よりも長く感じます。
春夏・秋冬といったファッションのシーズンサイクルに合わせて
展示会が繰り返されるアパレル業界において、
「じっくり」とか「ゆっくり」とか「やりたいように」ということが
どれほど贅沢で難しいことかを痛感させられ続けてきたわたくしは、
アナベルを始めるときにその部分をとてもじっくりと考えました。
そのサイクルから離脱するのは無理かもしれないが、
似たようなことを考えながらモノつくりをしている人は
きっとたくさんいるはずだと。
お店には、そういう人たちの作ったものを置いて紹介しようと。
「sono」は園田さんのご厚意により、贅沢なくらいゆっくりと
じっくりとやりたいように進めていける、楽しい取り組みの一つです。
3年目にして、sonoの第4弾、「sono4」をご紹介できることになりました。
sono sono4(そのよん)
もうご存知かと思いますが、sonoがブランド名、
sono4が商品名です。ほかに、sono1から3までございます。
そして、今回初めて違う革を使用いたしました。
タンナー(鞣し業者)は同じで、豚革でもあるのですが、
洗いはかけておらず、全てが新鮮に感じる特殊な鞣し革です。
今までより、お値段が高くなってしまうのですが、
どうしても使いたかった革でした。
園田さんのアトリエで、何か用事があって話を
している最中に、園田さんのご主人が間違えて送られてきた
革を送り返す作業をしているところでした。
実は、その革がこの革なのです。
見た瞬間に「絶対に使いたい。」と伝えて、
返すのをやめてもらったのでした。
グレー
ザラつきのある面がスエード面で、この革の表面です。
通常の表面が裏になっております。
ですので、裏面のほうがきれいです。
これが一瞬で引き付けられたダークブラウン。
このムラ感が特徴で、特殊な鞣し技術を用いているようで、
いっさいが企業秘密で教えていただけませんでした。
どうやらワックス?オイル?を多用してこのような
雰囲気が実現しているようです。もちろん天然鞣しで。
こちらはブラック。
少し青味もあり、やわらかい印象のスミクロです。
留め具は、いろいろ試した結果、磁石になりました。
今回は未晒しの紙袋をイメージしていましたので、
使った際に、ずっとビシッとしているのではなく、
クタっとして着た時に違和感のない留め具をリクエストしました。
磁石の入った革パッチの下側がふらしてあって動くので、
理想通りの仕様に見事に応えていただきました。
ふらしてあることで、使い込んでクタっとなった際にも
取れづらく、それでいてしっかりくっつき過ぎない、
本当に理想通りの留め具になりました。
もう一度同じ写真。
このカバンの最大の特徴は、持ち手である革の幅がとっても
広いということと、その上、内側にベルト状の持ち手があって、
上まで縫っていないということです。
実は、この仕様が決まるまでに結構な時間を費やしました。
さらに、それが決まった瞬間が面白いくらいにあっけなかった。
仕上がりはこのような内側に持ち手が付いた
デザインになっているのですが、当初は逆で、
外側に持ち手のベルトを叩き付ける方向で考えていました。
でも、問題点も明らかでした。
「袋っぽさが出ない」ということ。
イメージしていたのは、本体の部分に未晒しの袋っぽさが
感じられる事。だから持ち手をどう付けるかをみんなで
しきりに考えていました。
それがこのようになったのは、、
ある日、園田さんが慌ただしくサンプルを手に持って
やって着た時、、
「あ、これ今裏返しになってます。すみません。」
「それいいですね。。その裏返しの形。」
本当に、見て一瞬で方向が定まりました。
あの日、園田さんが裏返しでにサンプルを
持ってこなかったら、sono4は形にならないまま
企画倒れになったかもしれません。
革との出会いも、デザインの決まった瞬間も、
偶然性を強く感じるものでした。
そして、最後の仕上げをしてくれたのは、
オリジナルジャケットのピンを作っていただいた、
lcf の立川さんです。
遠くから粒の様にみえるこちらは、
真鍮製の飾り釦です。
立川さんが所持していた、アンティークの釘の頭を
かたどった、いびつな形状がとても気に入っています。
真鍮ですので、はじめはピカピカですが、徐々にいい感じに
経年変化をしていきます。
もちろん、磨けばもどりますので、ピカピカが良い人もご安心を。
今回の形は、A4サイズは入りません。
わりと小さくて書類は入らないけど、普段使いには
十分、という手持ちの可愛いカバンを作りたかった。
お財布、携帯、鍵類、化粧ポーチ、ペットボトル、
手帳、筆記用具、そのくらいは余裕で入ります。
小さいですが、マチもありますので。
それに、折りたたみなら日傘も入ります。
sonoを始めるときに決めたのは、「袋」みたいな
モノだけを作っていきたいという事。
だから、すべて裏は付けず、仕上がりもきれいになり過ぎない
ように、そして使用していくうちに、より袋感が出ることを
想像しながら企画を進めています。
今回もそれは同じです。
最初はキレイな印象ですが、クタっと感が出るように
作ってあります。
この太い持ち手も、使って握るうちに癖が
付いてきたらいいなって想像していました。
持つところだけ、クシャッとね。
手に持つか、肩からワンショルダーで
掛けるかのどちらかです。
革の感触は、最初は少し堅さがありますが、
すぐに馴染んできます。豚革のいいところですね。
そしてこちらの革は、その色も変色は大きくありません。
もちろん、多少は変色していきますが、それよりは、
グレーも含めて濃くなりながら艶が増す感じです。
そして、豚革のあの軽さも健在です。
とっても軽い。
この3つの写真、少しクタっと馴染んだ感じが
わかりますでしょうか?
わたくしが1か月くらい毎日使った状態です。
少し袋っぽさが出ていますよ。
立川さんが作ってくれた飾り釦も手伝って、
革も違うものになったため、今までのsono とは
少し趣が違うように見えますが、袋っぽさは
大切に考えて作りました。
「少しきれいめの袋」としてお使いいただけますと幸いです。
<企画展のお知らせ>
「アンティーク園」を開催します。
5月16日(木)~ 21日(火)まで
annabelle 304にてお待ち申し上げます。
パリの青木さんとの蚤の市を開催するようになって、
今年で8年目になります。
僕が初めて、海外のアンティーク蚤の市を体験したのは
社会人になってからで、2003年と記憶しています。
言葉も通じない、知らない人たちが並べる品々を通して
繰り広げられるやり取りが、楽しくて仕方なかった。
当時のそこには、「テイスト」などというカテゴリー分けは存在せず、
ごった煮の中から自分に取り入れたい何かを探す楽しみがありました。
青木さんは、10数年にわたり、パリ生活を続けていることもあり、
その時僕が感じた最初の蚤の市との出会いの空気感を
今も纏っているように感じさせる女性です。
今回も2回連続でアクセサリーブランド「vali」の水野久美子さんが
ご一緒します。今回は、「動植物にまつわるもの」という題目で
様々なアンティークを並べます。
ぜひ、彼女たちとのおしゃべりも楽しみにいらしてください。