胸に切り替えのある、あて布のような感覚でデザインされた
シャツを「イカ胸」などと呼び、メンズファッションでは
燕尾服などに合わせたフォーマルファッションから派生した
ウィングカラーデザインのシャツなどは昔からよく見かけます。
私も好きで古着からオーダーシャツまで何着か持っています。
着る返部分がタックになったり、別布を用いたりするシャツも
多く見かけますが、このシャツをはじめて見た8年前、
そのイカ胸シャツをすぐに連想いたしました。
maison de soil
Linen embroidery shirts
off white ¥22,000+tax
イカ胸シャツの切り替えのような感覚で、手ぶりのセンスのいい
ミシン刺繍が額装のように施されるシャツは、もう同ブランドでは
お馴染みの定番的存在であり、コットンでは今シーズンもすでに
ご紹介している。
しかし今ご紹介するのは、実は待望していたLinen100%。
「実は」と付けたのは、自分でも全くリネンが欲しいという
意識はしていなかったにもかかわらず、展示会でこれを見た時、
思わず「あ、、」っと声を漏らすほどだったから。
色はどちらも素敵な定番の2色展開。
off white・black
20代の頃、ジーンズに黒は似合ないと思い込んでいました。
でもある時、女性スタイリストがジーンズに黒のリネンシャツを
すごくかっこよく着ていたのを見て、一瞬で考えが変わりました。
まったく重たさも野暮ったさもなく、トンガリ過ぎた印象もなく、
それどころか、柔らかく軽やかでいて、クラシカルな雰囲気をもった
着こなしは、「ジーンズ×ホワイト」には出せない存在感を放っていた。
black
ジーンズではないけれど、インディゴに合わせてブラックを。
リネンの長袖シャツは、僕が春夏シーズンで最もたくさん着る洋服です。
3月後半から着始めて、9月いっぱいは着続けます。
今は一枚で着るのがちょうどいい季節です。
触るとポコポコとした感触がある凹凸のある刺繍です。
シンプルに着て、かっこいいものだと思います。
タックインをして、羽織を。
同じくふんわりパンツの白にオフをタックイン。
昨年から引き続き、白と白のコーディネートは多い私。
もう気分ではなく、自身の定番スタイルの一つになりました。
わずかな季節の移ろいを感じることが難しかった2020年春夏。
きっとたくさんの人にとって忘れられない年になるのでしょう。
南から梅雨前線が張り巡らされ、関東にも梅雨がやってくる。
初夏の朗らかな過ごしやすい日々に一瞬差し込む「梅雨寒」。
車内の寒さにどうにもならない思いをするのもこの季節だ。
夏に行きかけた装いが立ち止まるのもこの季節。
なんとなくもう一回ジーンズを履いてみたりする。
ただし、綿麻の涼しいやつだが。
季節の変わり目には、なぜだかベーシックがやりたくなる。
それはたぶん、クローゼットを漁る季節だから。
懐かしい洋服が出てきたり、履けるかどうか怪しいズボンを履いてみたり。
オーセンティックな雰囲気を持つ華やかな刺繍シャツは、
上質な麻のレースのハンカチを着たような気分です。
ポケットからサッと取り出すハンカチのように、
サッと纏って何度も着てしまいそう。
忘れられない夏に。