僕自身のファッション(気分)の中心にいるのは、
60年代〜70年代にかけてのアメリカントラッドで間違いない。
確かに、今の自分からは少し遠い存在のような気もするのですが、
最もどっぷり浸かっていたファッション文化はそこでした。
映画なんか全く勧めてこなかった父が、中学時代に唯一強く勧めてきた
映画が、「スタンドバイミー」でした。英語の教師でもあり、のちには
翻訳業をやることになる父には、その字幕の翻訳にも素晴らしい点がたくさん
あったようで、熱く語っていましたが、当時の僕には全くその時の父の話が
ちんぷんかんぷんで、今でも何を言っていたかほとんど思い出せません。
父は映画館で見たようですが、僕が見たのはたぶん公開されて2年くらいが
経った頃で、ちょうどスニーカーとジーンズに興味を抱き始めた頃でした。
あの映画に登場する少年たちのように、かっこよくジーンズやチノパンを
履けたことは、未だかつてないのですが、高校時代には相当な憧れを
持っていたことが、過去の写真からも感じ取れるから恥ずかしい。
長くなりましたが、お店を9年やってきて、今の気分は少しだけ、
その中心に近づいているように感じています。
このブランドを取り扱うようになった頃から少しづつ。。
バンドカラーシャツ ¥19,800(税込)
ASEEDONCLOUD(アシードンクラウド)のデザイナー玉井さんが、
おそらく自身の中心に据えているベーシックなワークラインを
ブランド化したもの。
気分が多少外れても、生涯着ることができる普遍性のある
商品が、年々少しづつだけ増えていくブランドです。
スタンダードで個性的な素晴らしいバンドカラーシャツです。
これを切って着ている人もチラホラ見かけます。
切ったらどこのブランドかわからない気もしますが、
やっぱりこのシャツのギャザー使いやボタンをはじめとする
全体のバランスは、「玉井さんのシャツかな?」って
なんとなくわかるからすごい。
この上から叩いたホームベースみたいなガセットもそう。
このあたりの仕様もそう。人が着ているのを見ても、
気になって仕方がない。
そんなこと一切考えたことのない妻に着てもらいます。
まさに50年代後半あたりを彷彿とさせるファッション。
古いバンドカラーシャツをたくさん収集していたそうです。
シャツとにらめっこをして、玉井さんが生み出した変えようのない
完成されたデザインのシャツなのです。
遊び心が加えられています。
写真では全く確認できないのですが、(老眼には直で見ても危うい)
実は一番上のボタンに、ある刻印が彫られています。
「HW lehrling(見習い)」という文字が彫ってあります。
そして品質ラベルに取り付けられた予備のボタンには、
「HW geselle(職人)」とあります。
「lehrling(見習い)→geselle(職人)→meister(親方)」の3段階を
モチーフにして取り入れた面白いデザインです。
それぞれ「レーアリング」「ゲセレ」「マイスター」と読むそうです。
着続けた人は、見習いから職人に格上げされる、そんなニュアンスです。
なんとも玉井さんらしいユーモア。
入った生地になりますので、少し丈夫さと動きやすさを
意識した、まさに職人のためのような素材でしょうか。
そもそも動きやすいシャツですが、ストレッチが入ることで
なお一層に動きやすい。
季節の変わり目は、店内の風景も着るものも変わる一方で、
さらに先のシーズン(来年の春夏)の展示会も始まってきます。
そんな時期には、自身の興味を遡ることで今の気分を探ります。
今シーズンの玉井さんのデザインは、その中心にある存在でした。
彼のコレクションを中心に据えて、バイイングを進めてきたように思います。
このワークシャツのようなストライプも、「そろそろこんなの、どう?」
って言われているみたいで、すごく新鮮に映ったのを覚えています。
入荷してきた今見ても、半年前の展示会での感触と同じように新鮮です。
季節の変わり目、、
皆さんも自身の興味を遡ってみてはいかがでしょう。
新しい発見や面白いことを見つけちゃうかもしれませんよ。