2019年12月6日金曜日

キャリアからくる重み

我々のようなバイヤーと呼ばれる仕事をしている人にとって、

商品を目の前にした時の「パッと見た目の面(つら)」というのが

非常に大切であることは、共通している基準かもしれません。

もちろん、その後でいろいろと考えて、扱うかどうかを決めるわけですが。

その、パッと見の面というのは、細やかなデザイン的配慮の数々があって、

はじめて洋服の重みとなって人の心に響くのだと思っています。

このコートからは、デザイナーのキャリアの重みを感じます。





















khadi & co
ヒマラヤウールコート
brown ¥105,000+tax

デザイナーであるベス・ニールセンはデンマーク出身の

キャリアのあるデザイナーです。

1970年代からインドにわたり、ファッション業界と

手紬、手織りのKHADIを繋いできた第一人者と言っていい。

70歳を超えるベスのデザインには、ラフな雰囲気の中に

細やかなデザインディテールの垣間見える、ベテランならではの

凄みも感じられる。















ブランケットのようなザクっとした羊毛にコットンの

裏地が付いたコートは、正直軽くはない。

が、着ていただくと重みはさほど感じられない。

Vネックの衿周りは、断ち切りのコットンが挟み込まれた

デザインで、小さなことだが凄くかわいい。















ボタンホールは表地を長方形にカットした布地を重ねて

縫い合わせることで、補強にもなり見た目も可愛らしい。

実益を兼ね備えた可愛いデザインディテールは嬉しいもの。















少し見えずらいが、前端のステッチはフルハンド。

もちろん、ミシンも用いたうえで、ハンドステッチの

可愛らしさとこちらも丈夫さを向上させるためのデザインに。















角は最もきれいで丁寧で、最も工賃のお高い額縁仕様。

まつり縫いで、見ているだけで心地いい。















この袖口のデザインも少し男性的で大好き。

内側の当て布に硬さのあるポリエステルナイロン系の

グログランテープを使用しているのですが、それをわざと

はみ出させて見えるようにしています。















そして、袖口はわざと長めにとって、

「まくっても可愛いよ」という提案。

素敵です。





















もう、可愛いに決まってます。















今月発売の「ナチュリラ冬号」にも登場するので、

そちらのスタイリングもぜひ見てほしいな。















このラフな雰囲気に詰め込まれたこだわりのある

細やかなデザインの数々が、パット見た目の凄みを生み出している。















材料を生かしたデザインて、見ていても心地いい。

着たらもっと素敵な気分でしょう。





















今の通常のレディースファッションではほとんど

お目にかからない羊毛の打ち込みのある昔ながらな生地は、

一種独特のオーラを放つ。

キャリアと実力のあるデザイナーに使われて、

さぞ、幸せなことでしょう。


<展示のお知らせ>
















15歳で油絵を始め、色彩の世界に没頭する毎日を送っていた。

25歳の時、自身の未来について真剣に考える時間と変化へのきっかけを求め、

1970年代初頭、ヨーロッパへ向かいます。

飛行機ではなく、横浜港から船に乗りこみ、まずはソビエト連邦へ。

モスクワまで飛行機を乗り継ぎ、東欧を電車で駆け抜け、4月のパリに到着します。

およそ1週間かけてたどり着いたパリで偶然見た、アメリカ先住民インディアン、

ナバホ族のブランケット展に少しずつ心惹かれていったそうです。そう、少しずつ。

初見では、正直何も感じるところがなかったそうですが、何度も足を運ぶことで

変化が現れ、最後は「もうこれしかない!」という決意を持って帰国したと言います。



帰国後、ホームスパンの実習に通い、人生を懸ける決意をしたそうです。

それから40年、糸の染色に重きを置き、糸を紡ぎ織り上げることに命を懸ける

吉家京子先生の作品をファッション業界の我々が発信する唯一無二の機会になる

ことと思います。この機会をぜひ目撃していただきたいと切に願います。



2019年吉日

annebelle店主

伊佐洋平


明日、12月7日(土)~15日(日)まで、3階のannabelle304にて展示します。

水曜日は定休日としてお休みを頂戴しますのでご注意ください。

何度もお話しを聞く中で、

「もうこの年になるとね、周りの素晴らしい同志や先輩や大切な

友人がどんどんいなくなってしまってね。。」


「私はどうしたらいいんだろう、って考えた時にね、今やっている

ホームスパンの中で、鳥になった気持ちで友人に声をかけて回ったり、

自然の中に身をゆだねたりするのね。そういう表現になってくるの。」


「人生はね、様々なものや人との出会いと別れの繰り返しなの。」

「結局、人との出会いがすべてなのかな。」


この展示に向けて準備を進める中、本当にいい言葉をたくさんもらいました。

作品は、吉家先生のお人柄が十分に詰まった素晴らしいものばかりです。

私のお気に入りもたくさんあり、男性への贈り物としてもお勧めですよ。

ぜひぜひ、お越しくださいませ!

吉家先生は、全日17時頃まで在朗予定です。

こちらもキャリアからくる重み、感じられますよ。