SP(エシュペー)デザイナーの赤丸さんといえば、、
最もデザイナーに見られないデザイナーとして自他ともに
認めているところだと思います。その点においては聞けば聞くほど
楽しいエピソードがたくさん出てきますが、実は赤丸さんには
ファッションデザイナー以外にも活躍の場があるのです。
少し近い職種ですが、彼はテキスタイルデザイナーとしての
側面も持ち合わせています。
元々コレクションデザイナーとして活動していた時代から長く、
生地産地の機屋さんと密に関わる中で、一緒に企画を出し始めたのが
きっかけで今も続いてるそうですが、SPの洋服作りには彼のその
キャリアが大きく貢献していると思います。生地のことを喋り始めると
ますますファッションデザイナーに見えないほど楽しそうに話します。
毎回、いくつかオリジナルファブリックを手がけていますが、
今回はこちらのコート地がそうでした。
ステンカラーコート
Beige ¥104,500(税込)
お値段に少しひるみますよね。お店でもそうです。
すごくシンプルなのに存在感があるので皆さん気にかけてはくれるのですが、
お値段を見て驚きます。普段から高い生地や洋服を触っている僕ら洋服屋のような
人たちは、触って組成を聞いたらある程度のお値段は覚悟しますが、お客様は
驚く方が多くて当然かもしれません。
そうなんです。彼の作るオリジナルファブリックはいつもそうですが、
面白いほど玄人好みで伝わりにくい。。
今回の生地は、経糸にウールの双糸と単糸を引き揃えて緯糸にリネンを
使用しています。しかも織り上げたのはドイツ製の古いシャトル織機、
ションヘル織機です。尾州や一ノ宮など、国産の高級スーツ地などで
使用される低速のシャトル織機です。現代の大量生産向けの超高速織機と
比べると、1日に織り上げる量は10分の1程度とも言われますが、
ゆっくりと織り上げることで、原料に負荷をかけず、空気をしっかりと
はらみながら織上がるので、仕上がりがふっくらとした、ヴィンテージの
ような風合いに仕上がるのです。
お客様も「何か違う」「何かいい」と思って手に取ってくださっているのだと
思いますが、まさに生地へのこだわりが滲み出ているのかもしれません。
ように小さなマチが施されています。
後ろのベントには付いているものも多いのですが、前は見かけません。
ブラックです。
必要最小限のミニマルなデザインがクラシックな雰囲気をさらに
高め、この生地の存在感を引き立てているように思います。
経糸のウールの軽さに、緯糸のリネンの重さが加わることで
程よいドレープ感が生まれ、着れば着るほどにしっとりとした起毛感が
より一層の上質な風合いをもたらすことでしょう。
100年以上前の織機で織り上げた素晴らしい生地は、まさにヴィンテージが
現代に蘇ったかのような迫力を持ち合わせています。
インナーの明るい色もあって、春のような雰囲気もありますが、
半分近くリネンの入った軽めのステンカラーコートは、
冬よりもむしろ春の方が活躍するかもしれません。
上品なカラーではないでしょうか。
一枚袖ラグランは肩のあたりをスッキリ見せるのが難しいように
思いますが、生地とのマッチングもあってとても綺麗です。
春は真っ白のTシャツに着てもカッコ良さそうなコートですよ。
ごめんなさい。もう頭が半分春に傾いておりまして。。
ブラックはデニムやチノカラーでもかっこいいかと思いましたが、
シックで上品にオールブラックでまとめました。しかもワンピースで。
赤丸さんは、初めてコレクションを拝見した時から襟に特徴と癖のある
デザイナーさんだと感じていましたが、これだけシンプルなものを
作っても、やっぱり襟には雰囲気を感じます。
閉めても開けてもかっこいい。
某有名ブランドのもので、もう20年近く愛用しています。
その次に長く着続けているのは、お店を始めた際に購入したHonnteの
裏地付きのショールカラーコートです。ちょうど10年着ています。
その2つは両方冬のコートではあるのですが、見た目もスタイルも
全く異なりますし、着る季節も微妙に違います。
Honneteのショールカラーコートは薄手で羽織る感じで着たいので、
今くらいまでは着ますが、1月、2月は着用回数が激減します。
でもそれでいいかなと思ってコートは買っています。
そればかり着てしまうとコートの寿命は短くなりますが、数着の
お気に入りがあることで、その全てが一生ものになるでしょう。
SPのこのコートも、誰かの一生ものになりますように。