2022年12月21日水曜日

天邪鬼なスラックス

「フラノ」という響きを聞くと、メンズファッションではなんだか

キチッとした温かい背広やビシッとした冬用のセットアップなんかを

すぐに連想してしまいますが、annabelleでも人気のNO CONTROL AIRが

扱うと、今までのフラノの印象がガラリと変わります。

ちなみに先日ご紹介した同ブランドのコート。

こちらがフラノウールです。





















紡毛の織物ですから、メルトンなどが仲間ということになりますが、

フラノはメルトンほどの重量はなく、いわゆるネルシャツのネル素材などよりは

ずっとしっかりした素材です。一般的には冬物の紳士用のスラックスやジャケット

などを作ることが多い、昔からある冬の定番素材です。

綺麗めで、少し張りもあって仕立て映えする素材。

こちらのコートもデザインはとても遊びのあるものですが、素材と相まって

式典などにも許容できる雰囲気です。シンプルで上品で遊びもある。

今日はこちらのコートと同素材のパンツをご紹介いたします。
















NO CONTROL AIR
フラノテーパーパンツ
Grey Mix ¥32,450(税込)

フラノ素材を使いながら、デザインはいつものNO CONTROL AIRらしさが

全開です。股上をしっかり下げてヒップをゆったり取りながらのキュッと

テーパーデザイン。彼らにとっては10年以上前からずっと定番に据える

代表的なシルエットのパンツです。
















ただ今年のテーパーパンツが少し新鮮に見えたのは、

全体的にややスッキリさせていたこと。そしてとりわけ横からの

シルエットは今までの太いパンツを味わった後だと、「細身?」と

錯覚を起こすような綺麗なシルエットでした。












ウェストはいつも通りゴムと紐。やや太めのシャーリングは

もはやノーコンのアイコン的な存在です。タックインした時の

カッコ良さはもちろんですが、今回のデザインはギャザーではなく

タックでスッキリと分量を出していますので、スッキリしたトップスで

合わせても気になるような膨らみはありません。












グレーミックスというだけに、近くで見ていただくと細かく

数色が混ざっていることがわかります。1m離れたらもうわかりません。

でもミックスされているおかげで、ウォーム感が出るのかと思います。

ポケットはシンプルなものが両サイドにあるのと、、、



















後ろは右側だけ、こちらも同ブランドの定番の仕様で、

フラップのポケットが施されます。












そしてより綺麗めな印象を助長しているのは、裾ダブル仕上げのデザイン

ではないでしょうか。紳士服では当たり前のように「シングル?ダブル?」って

お店でスラックスを購入した際には必ず聞かれていました。

最近はどうなんでしょうか?

カジュアルではまず無いような気もしますが。

今のように着丈短めで仕上がっているパンツが皆無であった時代は、

コーデュロイのテーパーワイドパンツをわざわざお直し屋さんで

「ダブルでお願いします」って出して穿いたりしていました。

そんなちょっとした工夫が周りの洋服好きに伝染していくのが楽しかった。












そして真冬には嬉しいキュプラの裏地付きです。
















Midnight

ミッドナイトは、上品な濃紺です。

コートとセットで着ても、この色なら良いのではないでしょうか。

とてもおしゃれです。












カラーはこの2色でのご紹介です。





























トップスにはゴーシュのアルパカウールのセーターを合わせて。

実はこのセーターの最後の1着を購入したのは妻でした。

差し色ながら、本当にあらゆるボトムスに合わせやすい。

ゴーシュさんの色出しには頭が下がります。

カットソーやタートルも、実は色ものが使いやすかったりするんです。












真横から見ると急激なテーパー具合がよくわかりますね。

股上が下がっていますから、少し着丈が長めのトップスでも

カッコよく合わせていただけます。





















股上の下がったサルエル仕立てで、ヒップにもゆとりのあるデザインです。

身長155cmの妻でXSをこのくらいで穿いています。

目安では160cm以上の方はSサイズということになります。

見ての通り丈は短めです。しかしサイズを上げると丈は長くなりますが、

渡り幅が3cm違いますので、なかなか太くなる印象です。

ご自身の体型を当てはめて、バランスの良さそうな方をどうぞ。












コートはSP(エシュペー)の春でも活躍しそうな、、いやむしろ

春の方が着るでしょうというコートを羽織っています。

一応冬物のコートですので、これからご紹介はいたします。

でも多分、3月、4月の2ヶ月間が一番似合うコートです。

ラベンダーぽいブルーのセーターと相性が抜群です。












ミッドナイトは着丈のスッキリしたFACTORYのモンゴリアンウールの

アナベル別注セーターを合わせていますので、先ほどのミックスグレーより

シルエットがよくわかるかと思います。






























ヒールも履いているので、随分印象が変わるかもしれません。

綺麗めな印象が先行しています。












しかし後ろから見た時のサルエル感がNO CONTROL AIR。

フラノというカッチリ感の印象が強い素材を彼らが使うと、

スーツにスニーカーを合わせた時のようなおしゃれ感が漂います。

スーツにスニーカーは2005年頃から流行り始めたような記憶ですが、

最初はコンバースオールスターのハイカットをグレーのスーツに

合わせる人を見かけ始め、そのうちブラックスーツにハイテクスニーカーを

合わせる人が現れた。その傾向は今のファッションに続いているように感じます。


もっと遡って、僕やデザイナーの米永さんが若者だった1990年代に猛烈に

流行ったのは、Gジャンにネクタイ、Gジャンに蝶ネクタイでした。

昔のファッション誌は「はずし」という言葉をよく使っていましたが、

対照的な要素をわざと入れ込んでいくスタイリングは、今も僕の基礎にあり、

そんな天邪鬼な発想が次の大きな流れを作ったりするもんだと思っています。


スッキリしたパンツにぶかぶかのトップス
ぶかぶかのボトムスにスッキリしたトップス
ボロボロの古着にビシッとしたジャケット
かっこいいセットアップにビルケンのサンダル
短パンにブーツ

なんでもいいから着てみたいものをカッコよく着ようと思ったら、

そんな発想でスタイリングを考えると意外と楽しめるかもしれませんよ。

真冬のパンツがまだの方、いかがでしょうか。