2022年4月10日日曜日

relic〜レリック

自由や社会への反逆の象徴として大流行したアメリカのジーンズが

物語るように、ファッションは身につける人の精神性や社会への

メッセージも込められて然るべきだと思います。

その縮図が、自身のライフスタイルを投影したファッションや、

その時の気分を表したスタイルなのだと思ってみています。


そんなことを考えていると、少し以前は「白か黒しか作る気がしない」

とまで言っていたsusuriのデザイナーが、数年前から「色を使いたくなった」

と言い始めたことが思い起こされます。

たしか、そのタイミングでブランドネームが小文字から大文字に変わりました。

ずっとSUSURIを購入していた方はお気づきだったかもしれません。

デザイナーは自身のブランドというフィルターを通して社会をみている

わけですから、何らかの感触が変わったのだというサインかもしれません。

その頃からです。このような主張のあるファブリックを多用するようになったのは。
















SUSURI
レリックドレス ¥58,300(税込)

SUSURIさんのお洋服のネーミングはいつも気になります。あまり馴染みのない

名前が多いので、展示会でデザイナーに聞いたり、聞き忘れたら自分で

調べたりしています。この名前も気になりませんか?調べました。


relic(レリック)

「かつては繁栄していた生物が絶滅しかかったり、あるいは地理的隔離を

受けたり形態的、生理的に特殊化したことで 絶滅しやすい状態におかれている

生物種。残存種。」















この意味から、色々な考察が頭をよぎり、実に面白い。

自身のブランドや自身の感性のことをさして感じて付けた名前なのか?

それともこの類い稀なドレスのファブリックを指して名付けた名前なのか?











このような生地は、SUSURIさんがファッションデザイナーとして

世に送りたいと思わなければ、目に触れる機会もなく過ごしていた

かもしれないほど、面白い素材だと思います。











ここ数シーズン、SUSURIさんではかたくなに継続している手法の

柄ですが、「欲しい!」という人たちが一定数いなければ絶滅します。

その心境をおもんばかってのネーミングでしょうか。











民族ドレスをモディファイして現代的に仕上げたドレスは、

ところどころでワクワクするポイントが集積しています。












とりわけこのフレアラインの袖がとっても素敵です。

袖と裾をひらひらふわふわさせて歩きたい。











洋服は基本的に「気分」で作ったり着たりするものだと思っています。

その中に、大袈裟には時代背景やご自身の生活環境が混じり合い、

折り合いのつかない洋服もあれば、心地いいお洋服もある。












先日、ある取材を受けた際に、ライターさんとの会話で驚いた

ことがありました。僕からみて、今の20代前半や10代の若ものの

ファッションを指して、「とてもなだらかに全員同じようにおしゃれ」と

いったような表現で口にしたところ、「量産系ですね?」と言われました。

お恥ずかしながら「量産系」という言葉はファッション用語ですか?

と聞いたところ、そうだと言う。知りませんでした・・。


我々の世代の発想からするととても頭が混乱するのですが、量産系は

決して否定的な意味ではなくて、多くの人が反応したものに自分も

いち早く反応したい!ということのようです。結果、当然多くの人が

反応しているわけですから、みんな似たようなファッションになるわけです。

しかもその多くが、「決して目立たない」「どこにでもいそうな」「でもおしゃれ」

というキーワードもあるようです。












僕の時代が「とにかく人と違うものを!」「被らないものを!」という

精神で洋服を楽しんでいたことを思うと、まさに正反対です。

でもこれ、正しいとか間違っているといった問題ではないのです。

きっとこれを「時代」というのだと思います。


そんな抗えない「時代」に対する反逆を描いたかのような

こちらのSUSURIのドレスは、冒頭のジーンズのような存在なのか。

ぜひ、どこかの誰かに、、できれば「デイリー」に着てほしい。

そんな願いの含まれた「レリック」なのかもしれません。