僕は約10年、メンズブランドで働いていたので、「美しい」
という言葉をお洋服に対して使うことはほとんどありませんでした。
むしろ、少し照れ臭い感情もそこにはありました。
そんな感情に、1本背負いのような衝撃をくれたのは、
ゴーシュというブランドでした。
ゴーシュ ノーカラーシャツ ¥20,900(税込)
70歳以上の方が「楽」だと言って素敵に着てくださるお洋服。
ゴーシュのお二人はきっとそんなお洋服を目指して作り続けているのでしょう。
ゴーシュのお取り扱いは、アナベルのオープンである2012年の春からなのですが、
2013年に、ある雑誌の取材を受けて、「ゴーシュに対する印象を短文で
表現してください。」と言われて書いたのが、以下の文面でした。
『着た瞬間にデザイナーの世界観に誘われるのがモード服の定義であるならば、
きっとゴーシュは、モード服なのかもしれない。』
こんな言葉をその雑誌のコラムに書きました。
今でもずっと同じように感じています。
我々のような日常着をテーマにしたセレクトショップに並んでいると
とてもカジュアルな仮面を被っているように見えますが、
着心地やそのプロダクトのプロセス、着用の美しさはモード服そのもです。
「これは定番ですか?」
初めてお取り扱いのオファーをかけて、展示会に伺った際に質問しました。
帰ってきた答えは、、
「少しも形を変えないことが定番の条件なら、違います。」
という返答でした。少し鳥肌が立ちました。
つまり、パッと見の印象は変わらないにせよ、その時の気分で
「着丈を1cm伸ばしたり、身幅を3cmゆったりさせたりはします。」
ということでした。時代に対する微調整は常にしていますと。。
オーソドックスな見た目のお洋服には思いがちな「定番ですか?」
でしたが、凛とした返答に、背筋が伸びる思いでした。
袖口、カフスの形状も気が付くと変化していたりするから面白い。
今回は、ベージュ、ブラック、パープルの3色のご紹介です。
本来は、ホワイトとライトブルーがあったのですが、
その2色が完売してしまいました。
暑い最中の入荷でしたので、涼しげな2色からの完売でしょうか。
秋らしい3色のご紹介です。
ベージュ。
昨日のパンツのご紹介でも登場しましたね。
サファリカラーのベージュは、大人がリラックスして
カッコ良く着ていただける素敵な色。
ファッションには好みもありますから、
「押し付けすぎては駄目!」って妻から再三言われています。
ですから、やんわり言います。
このシャツに限らず、騙されたと思って何かゴーシュの
お洋服を着てみてください。ぜひに。
「美しい」という言葉を使わざるを得ない姿が、そこにあります。
とても誠実なご夫婦が作るゴーシュというブランドには、
そのお二人の誠実さが滲み出た秀逸さを感じます。
ゴーシュさんの仕様書やパターンへの指示は、ものすごく細かい!
というお話をゴーシュをよく知るデザイナーから聞きました。
実に工場の職人泣かせなデザイナーだと。
でも、もしかしたらゴーシュのお二人が過ごしてきた
トップメゾンの世界では、当たり前のことなのかもしれません。
我々が扱う日常着というのは、カジュアルに着ていただけて、
お手入れもラフであることが一つの基準になりますので、
あまりに高級な素材で、1着で4万円も5万円もするシャツは
そこには該当しないのです。(もちろん着てみる経験は必要です。)