2021年6月3日木曜日

「Made in 〜」

20代の半ばで洋服業界へ転職した僕が、一番最初に

勤めたアパレル会社は、以前にも少しだけお話ししましたが、

仕様書という紙を書いてFAXするとサンプルが上がってくる、

いわゆるテーブルメーカーでした。当然、社内にデザイナーが

いるわけでもなく、どちらかというとセールスに長けた偉い人が、

製品のことをたいしてわからずに、その管理も兼ねていた感じ。。

その7割程度が中国生産でした。

その会社に約3年間ほど在籍した後、デザイナーがいる日本の

ブランドで9年間働きました。ここは最初のアパレルとは

全く対照的な存在のアトリエで、そのほとんどを目の行き届く範囲で

行い、デザイナーの意思によって決定がなされてゆき、商品が出来上がる

会社でした。しっかりしたものづくりは、バイヤーやエンドユーザーからも

信頼され、働いている僕も「これがメーカーだよな。。」と感じていました。


なぜこんな話をし始めたか?

今日ご紹介するゴーシュのシャツが、「中国製」ですので、

全く知らずに購入した方が混乱しないように、その意味合いを

ぜひ聞いていただきたく思います。

以前から(3年以上前)アナベルでお買い物をされている方は、

同じお話になってしまうかもしれません。ゴーシュが中国生産を

開始したのはちょうど3年ほど前で、同じ内容で当時もアナウンスを

出しておりました。









ゴーシュ
リネンノーカラーシャツ
¥25,300(税込)

少し長くなりますが、聞いてください。

ゴーシュとNO CONTROL AIRの両夫妻が仲良しだというお話は、

以前に少しだけしたことがあったと思います。

デビューした時期が同じであったこともありますが、ゴーシュの泉夫妻は

お二人ともトップメゾンのパターンナー出身で、お洋服業界では

エリートです。そのお二人から見て、洋服の学校を出たわけでもなく

楽しそうに作っているNO CONTROL AIRのお洋服が、かなり興味深く

目に映ったようで、20年ほど前の合同展示会で意気投合し、

それ以来のお付き合いだと聞いています。

そんな両ブランドが共通して長くお付き合いをしている工場が

四国某所に存在します。とても手の良い工場で、

NO CONTROL AIRにおいては、全体の90%をその工場に委ねているほど。

ゴーシュも多くの商品をその工場に依頼しています。

当然、何度も現場を視察に行くわけですが、ある時から気になることが

出てきたそうです。それが海外からの研修制度で来ている方たちの存在でした。

外国人であることは全く問題ではなく、問題は日本で働く期間でした。

およそ3年いると彼らはそれぞれの国へ帰って行きます。

その工場の縫い子(実際にミシンを踏んでいる職人)さんも7割が

海外研修生に頼っていたということでした。

日本人で、縫い子として働きたいという人がそれだけ減ったということです。

そこで問題なのが、3年で帰ってしまうこと。

何が問題かというと、ちょうど手が慣れて相当に上達した頃に

いなくなってしまうというサイクルでした。もちろん来日当初から

日本人のスペシャリストが付いて指導していくので、その縫製レベルは

相当なものですが、ようやく目を離しても安心して任せられるように

なった頃、彼らはいなくなるわけです。そしてまた振り出しに戻ると。。


僕も2度目の職場で学びましたが、工場との関係性というのは、

メーカーにとっての生命線であると言っても過言ではありません。

当時働いていたデザイナーのシャツの多くを福島の小さな工場に

いくつも依頼していましたが、20年以上のお付き合いになる工場は、

こちらが何も言わなくても、「そのブランドらしい面構え」の洋服に

仕立ててくれます。ところが東日本大震災があったとき、生産が

どうにもこうにもならなくなり、急遽他の日本の工場をいくつか

あたってサンプルを作ってもらいました。正直な感想を言うと、すごく

上手に縫っていて、なんの問題もなかったように一見、思えました。

いくつもの工場でサンプリングをして、結局デザイナーがOKを出したのは

たった一つの工場だけでした。その違いは何なのか??

商品を並べて何度も見るうちにわかってきます。

デザイナーがOKしない理由が。。

それが「癖とも言える商品の面(つら)」でした。

OKを出した工場は、デザイナーが語る洋服へのこだわりや好みを

おそらく短期間でそれなりに理解して制作に臨んだのだと思います。

一方お断りをした工場は、サイズや仕様には丁寧に目配りをし、きちんと

指示通りの寸法で綺麗に縫い上げるが、デザイナーのこだわりや

好みにまで配慮が届かなかったと言うことだったようです。

とても感覚的な違いでした。

ゴーシュとNO CONTROL AIRの皆さんも、その時の僕と同じような

経験を繰り返していたのだと思います。

そんなタイミングで、中国に戻った研修生の人たちから連絡があったそうです。

せっかく仕込まれた高度な技術を活かして、若い人たちで中国で

工場を始めたいと。

そこで、縫い慣れたあなた達の洋服の生産を任せてもらえないか?

そういった内容で連絡を受けた彼らは、俄然やる気になったそうです。

それは、彼らの言葉を借りると、、

「どこで縫うかより、誰が縫うのかが重要だ」と言うこと。

声をかけてきた中国の方たちは、何回も洋服の話をしたり

食事もしたり、わざわざ休みの日に大阪まで遊びにきてくれたりするほど、

関係を作っていた人たちだったそうです。

ただ、彼らだけに任せるのは心配だったので、四国の工場の社長さんに

お願いして、当面の間は日本の工場の管理下で、縫っている場所は

中国。縫っている人たちは直接やり取りもできる、顔のわかる中国の人たち。

そういった、少し独特な生産体制を一部で試験し始めました。

それが3年ほど前。

設備も含め、日本の工場が管理していることもあり、工賃は国内生産と

同額をお支払いすることでうまく機能しているとのことです。

もちろん、最終的な検針や検品はゴーシュやNO CONTROL AIRの

両者が責任を持って行っています。

彼らは長年自分たちの商品を縫っていた中国の方たちを信頼して

日本に居た時と同工賃を支払い、新しい関係を築こうとしています。

僕らは、そんな彼らを信頼してお洋服を扱っていますので、

「Made in 〜」は、たいした問題ではないと思っています。

特に今回の両ブランドの中国製は、通常のそれとは性質が異なります。

この中国製に関する注意書きは、NO CONTROL AIRさんにつきましては、

彼らのホームページに3年前から表記され続けており、だいたい

上記と同内容でご理解を求めています。

ゴーシュさんにつきましては、ご存知の通りいまだにホームページもなく、

「インスタ?」

「なんですか、それ?」

というくらいの方々ですので、代わりに書かせていただきました。

どうぞご理解ください。


さて、長くなりましたが、いつも通り素晴らしいシャツの

スタイリングを、ザザッとご覧ください。












ホワイトはArtepoveraのララパンツに合わせて。























横幅はややゆったり。

袖はややスッキリ。

リラックスしてキチっとしたリネンシャツ。












グレーはNO CONTROL AIRの裾タックパンツ。

クールマックスの涼しいパンツに合わせて快適な夏を。






















着用して透け感が出ると薄く見えますが、

グレーはこんなお色。












ベージュはkhadi & coのスターパンツに。
















上質なワンツーコーデは、さりげない大人のおしゃれ。
















こちらも着用すると薄く見えますが、しっかりとした

ベージュ色です。












僕はコットンの黒いシャツは未だに一度も着たことが

ないのですが、リネンの黒シャツは大好きです。
















若い頃、似合わなくて憧れていたリネンの黒シャツ。

こちらはArtepoveraのララパンツに合わせて。









ブラックはボタンまでブラックです。









ダークターコイズは、少し緑みのある深いブルー。













オフホワイトのHAVERSACKのカーゴパンツに。
















とっても素敵なブルーは、黒やネイビーのパンツとも

相性が良かったのが意外で印象的でした。

今月20日頃発売予定の「ナチュリラ夏号」でもご紹介しています。

夏の間着続けられるいいリネンシャツだと思います。


ブログで何度も書いてきましたが、「らしさ」をしっかり洋服に

出すことは、とても難しいことです。でも、僕らはせっかく小さな

お店を自由にやっていますので、それを持っているブランドさんと

お付き合いするようにしています。今日は申し訳ないくらいお話が

長くなりましたが、皆さんもお気に入りのブランドのお洋服を

ちょっと違った角度から見つめ直してみてください。

より愛着が湧くと思いますよ。