ファストファッションが登場し、瞬く間に人気となった。
ファストフードになぞらえたネーミングも良かったのかもしれませんが、
かごに山ほど商品を入れて、スーパーのような感覚でお洋服を詰めている
姿には、どことなく違和感を覚えて見ていたのも事実です。
その一方で「本質の時代」ともいわれ、お洋服に限らず、
本物志向を求める方たちも増えていた。
「数は少なくてもお気に入りを少しずつコレクションしたい。」
という趣味、趣向の強い人たちがそこに当てはまるのでしょう。
そんな現代の時代背景を鑑みた時、このようなコンセプトで
洋服を作ってみようと考えたのかもしれません。
GASA*
”つくも” Trench coat
beige ¥86,000+tax
2020SS GASA*コレクション
『陰陽雑記云、器物百年を経て、化して精霊を得てより、
人の心をたぶらかす、これを付喪神と号すといへり』付喪神絵巻より
百年経つ古道具は、化けて『付喪神』『九十九神』に変わり悪さする。
室町時代に成立した絵巻物。
足利氏によって治められたこの時代は、日本における手工芸の発展が
多く見られ、たくさんのものが作られた時代です。
一年の最後、師走の13日は「煤払い(すすはらい)」を。
新しい年を迎えるための、日本の信仰として未だ残っているこの風習
大量生産大量消費のこの世の中はこの時代から始まったのかもしれません。
モノを慈しみ大切にする心を。
改めて見直したいと思うそんな気持ちからのコレクションです。
以上『GASA*』コレクションより
大きな上衿がラペルを覆い隠します。
覆い隠されたその下は、こんな風に。
”つくも” の名をもらったこのコートは、まさにそれに相応しい。
付喪神(つくもがみ)は、100年経ったものに精霊が宿り、
時々人に悪さをするという。
このコートに使われたヘンプ生地は、100年経ったかのような
風格を備え、その時代の布地のようにズシリと重さがあり、
いかにも丈夫な感触である。
裏は背裏と袖裏が付いている。
シンプルで主張し過ぎない大きな雨蓋デザイン。
少し長めにとったインボックスプリーツ。
内側にはボタンとタブが。
こちらも非常にシンプルでクラシカル。
ベルトの先端部分が細いデザインがかっこいい。
この上衿のデザインは、着ていただくとさらに際立つのがわかる。
本当に美しい。
本格的なミリタリートレンチを理解したうえで、
遊びがあり、トラディショナルにはない魅力を
存分に見ることができる。
GASA*のお洋服は、高価なこともあり、つい遠慮がちに着てしまう
こともあるのですが、相当な頻度で履きまわしてもへこたれない、
丈夫な布地作りが大きな特徴でもあるのです。
身に着けて気に入れば、メンズ、レディース関係なく
着る私も、GASA*のパンツを2つ持っておりますが、
かなりの頻度で履いて、洗ってを繰り返しても、
くたびれた印象をまったく感じさせないところに驚くばかりです。
100年の重みを感じさせる”つくも” Trench coat。
寒暖差のある今を抜けるとあたたかい春。
春の装いで軽やかに着たい。