今シーズンのSUSURIのコレクションは個人的に大好きでした。
センチメンタルなデザイナーの心境が、SUSURIというブランドの
コンセプトやらしさのようなフィルターを通して、とてもストレートに
表現されたものばかりで、 「販売」を考えなければ全て欲しいと思えるような
内容でした。感情の対比や抱えきれない個人差のようなものを表した
コレクションで、やはり目を引くのは素材感でした。
選びきれない内容の中から、自分なりに厳選した同シリーズのお洋服を
2つご紹介させてもらいます。
サシェドレス ¥46,200(税込)
この1〜2年ほどのバイイングは、どうしてもコロナ禍を意識せざるを
得ない状況もあり、誰もが取り入れやすい同トーンでのスタイリングや、
それが行いやすいお洋服ばかりに目がいってしまいがちでした。
もちろん、それではいけないと思いながらチャレンジはしてきたつもりです。
生地はふかふかとした、そして起毛したネルシャツのような素材です。
光に当てた際には多少の透け感はありますが、大きく気にかけるほどの
ものではありません。秋冬ですのでレギンスやタイツを活用して
楽しくきていただきたいと思います。
余計に心に刺さったのかと思ってもいます。
こちらのドレスもカラー展開はオフホワイト1色という潔さ。
しかし対比で面白さを考えた時に、柔らかさや清純さのあるソフトな白に、
ハードなアウターやチラ見せのボトムスを合わせることをスタイリングとして
想像すると、色としてハードな印象を持つブラックが同居することを
拒んだのかもしれません。
切り替えによるシルエットの変化やステッチ、配色の楽しさ。
SUSURIでしか得られない心地よさが充満しています。
楽しめるよう、ウェストの紐で後から自分自身で決めることができる。
ウェストの紐がフロント部分だけであり、デザイナーが発足当初から
公言している「横姿に特徴を持たせたい」という言葉を体現した
デザインとなっています。
今回はまだまだ秋冬ものの入荷を待つ状況にある時期だけに、
ハードなものとの組み合わせではスタイリングができませんでしたが、
ご購入をされた方にはぜひチャレンジしていただきたい。
素材感のコートを着てみるとか。
人たちも手に取ってくださるのではないか?
という包容力を期待できる展示会でした。
これが全体に絞れたとき、を想像してみると、
このデザインの良さがひしひしと感じられるのです。
押し寄せるような展示会でした。
同シリーズのもう一つはお馴染みのこちらです。
ムールベスト ¥41,800(税込)
SUSURIを好きな方は全員がご存知であろう象徴的なベストです。
今までも様々な素材で登場しましたが、今回もテンションの
上がる素材の当て込みです。
表地はパリッとした張りのある素材を太番手の糸で
特徴的なステッチを楽しんでいます。
しっかりしながらもふんわり感の同居した、今コレクションの
テーマを象徴するようなお洋服の一つでした。
ランダムに格子状に施された非常に特殊な布地となっています。
ここにもテーマにある心境が表現されているように感じます。
紐は後ろで結いても前で結いても自由です。
着るお洋服に合わせて、少し気にしてみると楽しいと思います。
ボタン好きのデザイナー斎藤さんらしいディテールです。
GASAのパンツに合わせてスタイリングしてみました。
シンプルなシルエットバランスのスタイリングで、
お洋服そのものに目のいくようなコーディネートを心がけて。
GASAのパンツポケット部分がしっかりと見えるように、
インナーのklauseのシャツはタックインをしています。
春夏を通してお勧めしてきたklauseのシャツは、秋冬もインナーとして
活躍させてくださいね。
下に合わせるお洋服によって、絞り加減を変えてみたり、
前で結いたり、後ろで結いたり。
自由に試していただきたい。
今シーズンのSUSURIを見るにあたり、以下を見直してみると、
より一層、楽しく見て、着ていただけることと思います。
<SUSURIのブランドコンセプト>
日々の旅
日常は、羞じらいや緊張、可笑しさや軋み(きしみ)など
曖昧な気分を見つける小さな旅の繰り返しです。
不確かで不均衡な流体。
そんな、揺蕩う(たゆたう)日々の気分を掬う(すくう)服
<2022AWのテーマ>
-connote-
何かの中に別の要素の何かを含んでいる。
幻想と現実 無垢と経験 しとやかさとおおらかさ
複雑さと明瞭さ 繊細なと大胆な
こんな対比をキーワードに何かと何かを組み合わせる服。
別の要素を内包する服。というのが今季の取り組み。
制限され保護された狭い安心な世界を生きてきた者が、
刺激的で広く責任を持つ必要のある世界との狭間に落ち、
新しい美しさや人の持つ感情の幅を知って抱えきれずに溢れ溺れかかる。
そんな物語を背景にして、多面的で自由。力強くて脆い。儚く純粋。
そんな気分でつくったシーズンです。
小説にとって題名が凝縮された言葉であるように、
デザイナーが作る洋服にとって、コンセプトは道標です。
迷ったり、ためらいが生じた際にとても重要になる。
それはあらゆる企業やひょっとしたら人々の人生における
一つ一つの選択にも大きく関わってくるものなのだと思います。
だから、コレクションの内容とテーマやコンセプトとの一致性は、
とても大切だし、その相関性があるほど色濃いものに見えるように感じます。
いつも楽しく拝見してきたSUSURIの展示会でしたが、今回は
より一層にそんなことを考える内容でした。
引き続き、入荷を楽しみにお待ちください。