2022年8月29日月曜日

長所=短所

「FACTORY = Knit(ニット)」

という連想は誰もがするほどに、FACTORYはニットの印象が強いブランドです。

アナベルでも、毎シーズンその部分を楽しみに、期待して展示会に望みます。

しかし彼らはニットブランドではありません。

今日は久しぶりにニット以外のFACTORYをご紹介します。















FACTORY
近江晒シャツワンピース
¥34,100〜¥35,300(税込)

アナベルでFACTORYのお取り扱いを始めたのは、2014年か2013年か、

その辺りだったかと思います。彼らはコペンハーゲンのcphヴィジョン

での活動が初動となり、新人ブランドとしての受賞も果たしています。

当時から、「一貫して自社での製造を目指す活動を行う」という目標を

掲げ、様々なことに積極的に取り組む姿勢がカッコよく、魅力的です。
















では、海外の展示会に出展したり、自社で紡績、撚糸、編み立て、縫製、

染色、仕上げまで賄えるブランドが突如誕生して今に至るのかというと、

そうではありません。実は現在中心となっている野村家のご兄妹の

お母様が、1970年代に地元足利でスタートしたブティックが前身にあり、

そこから連綿と続く活動が今のFACTORYとして、一つの集大成となったのです。












1970年代といえば、ファッションも黄金期。

特権階級のためのオートクチュール全盛の時代から、

じりじりと既成服であるプレタ中心へ移行したファッション界。

60年代の動乱を経て、好きであれば一般の人でも手の届くところで

トップデザイナーの洋服が手に入れられる時代がやってきた。





















そんな最中、日本の足利でブティックを始めたFACTORY現社長の

お母様は、世界中の素敵な洋服をセレクトするだけでなく、

お店の裏にほったて小屋を立ててミシン場と裁断場を作ると、

自ら生地を買ってきては洋服を作り、お店に並べるようになったそうです。

そのうち、どこにもないものを作ろうと、あの時代に海外へ渡り、

面白いと思った生地を買っては帰国して洋服を作るという、

今でいうオリジナル商品の開発に突き進んだそうです。
















そういったブティック時代のアグレッシブな活動が下支えとなり、

今から20年ほど前、社長の号令とともにモンゴルへカシミアを求めて

出発したそうです。












以前、足利のFACTORYを訪れた際にこんなことを聞きました。

「当時は商社もメーカーも中国経由のカシミアを競い合っていた時代でしたが、

なぜモンゴルだったんですか?何かアテがあったのでしょうか?」

それに対する回答がまた豪快でした。

「いろんな人と話をした結果、大勢の人が中国でのビジネスがいいような

話をする。でもたまに、本当にごくたまに、モンゴルの遊牧民の話をする人がいた。」

社長は、たまに話に出てくるモンゴルの遊牧民の話が毎回引っ掛かり

気になっていたそうで、「これはモンゴルに行くしかない。」と、

初めはなんのアテもなく渡航したそうです。












何年もモンゴルの遊牧民のところへ通った結果、彼らの信頼を得た野村家は、

彼らから直接上質なカシミアを購入することになったそうです。

今では、様々な地域や品種に広がり、WOOLやYAKを中心に扱うように

変化をしつつも、モンゴル国内で紡績工場も作り、日本国内で撚糸をして

編み立て、染色から仕上げも自身で行っています。そういったブランドは

僕の知る限りで前例がないのではないでしょうか。






























現在では、工場がオリジナル商品の開発を手掛け、自社ブランドとして

発表する取り組みは多く見かけますが、元々が小売で、外注を頼ることなく

一貫して自ら行うことに挑戦したパターンは聞いたことがありません。

もちろん、強みも弱みもあるわけですので、余計に今後の活動に期待を

寄せるわけなのです。





















アナベルでFACTORYを知ってくださった方たちは、ニットに関しては

間違いなく良いことを十分に知ってくださっていることでしょう。

僕自身もお客様と同じです。

そこで、今シーズンは布帛(布地)のものに興味を寄せました。

今までもとろみのあるバンブーウールなどがありましたが、

今回気になった生地は、FACTORYにしては珍しい高密度なシャツ生地の

ような感触のものでした。












「へー、こんな生地珍しいな、、」なんて思ってみていると、野村さんが

近づいてきて、「近江晒という生地で、これは自分たちで作ったものでは

ないのですが、染色だけ自社で行いました」と。


実は僕が弱みだと思っていたのは、「自社で全てを」にこだわりすぎると、

もの作りの幅がどうしても狭くなってしまうのでは?ということでした。

今回のこちらの素晴らしい生地が、今後のFACTORYの発展に繋がれば、

より面白い商品が出てくるのではないかと、期待をせずにはいられません。

FACTORY=Knitの連想が崩れることを楽しみに。