先日、久しぶりに帽子作家の佐敷さんと長時間お話をする機会がありました。
僕が靴のR.U.に行ったときに感じたことなんかをざっくばらんに話しながら、
佐敷さんは時折そこにある自身の作った帽子を手に取って、老眼の人みたいな
モノの見方でじっと何度も帽子を見て、たまにくるっと手元で帽子を回してみて
違う角度でまた老眼の人の動きをする。
これはモノづくりをする人に多くみられる動きかな?と思うのですが、
やっぱり客観視することの重要性をとてもよく知っているのだと思うのです。
そして、その美しさをもたらすのは、細部の完成度だということも。
僕はモノづくりを教わる学校や芸術や美術に触れる教育を特に受けてきたわけでは
ありませんが、ものをたくさん見たり、触ったり使ったりする中で、「佇まい」
とも言えるそこにポンと置いた時の美しさや存在感のようなものがいかに大事で
表現するのが難しいことなのかは、なんとなくわかっているつもりです。
撫でるように革の感触を確認しながら、テーブルにポンと載せて
少し遠くから眺めて、また革の表面を見ては「ウンウン」と
納得したような表情を浮かべる。
哲学のような感覚を持ち合わせているからこそ気になるのだと思います。
そんなものを持ち合わせていない人は、どう出来上がったか?よりも
何個できたか?が先にきてしまうのだと思うのです。
数年前から自分の代(だい)でサフジを終わらせたくないということを
真剣に考え続けているという点です。そして、そのために今何をするべきかを
考え、実行しています。
結局は部分的に技術を人に教えて制作活動を支えてもらいながら、
最も重要な哲学的な部分を理解、共鳴してくれる人材を待つ以外に
ないのだろうと思うのですが、こちらがただ待っているだけでも
そうはならないことも、彼は十分に理解して行動しているようです。
本当に尊敬できる制作者の一人です。
「うちの財布は、こう、なんていうか、、ふっくらした表情に仕上げたいんです。」
初めて会ったときにそんなことを語ってくれました。
確かにサフジのお財布はふっくらしています。手に取った際に軽さとともに
実感できる感触の一つだと思います。
小ささや、使い勝手が評価されるサフジさんですが、実は同じくらいに
モノとしての美しさや手触り、心地よさのようなところに強いこだわりを
持っている人だということは、初めてお会いした時に強く感じました。
そしてその思考こそがなかなか教えられない哲学を生むのだと思います。
やっぱり「継承」するための活動をする決意のようなものが
込められていました。お二人は本当にフランクな性格で、
「別に大文字にしよう!みたいな意識は全くありませんでした。むしろ、
絶対に選ばないというくらいの対象でした。でも、デザイナーからいくつかの
案を提示されて、何度も見るうちに選んだのがそれだったと。」
後からデザイナーに、「ビッグブランドはだいたい大文字です。」って
言われて、少し照れ臭くなったそうですが、自分たちのケジメ記念に
変えたブランドのロゴは、大変お気に入りの様子でした。
今回も新色を交え、たくさんのお財布が入荷しています。
入荷して10日ほど、店頭では販売していましたが、明日から3日間
お店はお盆の夏休みに入ります。
その前に、お財布全種を通信販売にもご紹介したいと思います。
商品的な詳細は、ぜひそちらでご覧いただけますと幸いです。