中国福建省、恵安地域の古くからの文化で、
数名の女性たちが小さな頃から本当の姉妹のように
互いの家を行き来し、寝食を共にします。
その絆は、本当の家族のように深くかたい絆です。
この中国の文化を、「姉妹伴」という。
西荻窪poefu さんとの共同別注企画は、
その古い文化になぞらえて、「姉妹伴」と呼ぶことにした。
姉妹伴の打ち合わせは、特にない。
普段から週に2回は電話で話しているので、
その中で話が盛り上がるときもあれば、
どちらかが、突然話を切り出す時もある。
だから、楽しくて仕方がない。
今回は、susuri さんにお願いした「姉妹伴」。
susuri ~姉妹伴~
Hide onepiece(ハイドワンピース)
後染めタイプライタークロス
pale peach(ペールピーチ) ¥28,000+tax
その名の通り、体を覆い隠すような大分量。
こちらの素材は、昨年susuri のコレクションにあったもの。
鉄釜を使用して高温で炊き込むように染色を施す方法は、
江戸時代から伝わるという。
susuri デザイナー斎藤さんが、お気に入りで使い続ける
この染色方法の素材は、「東炊き」という名前で現代に残る。
塩縮を起こしながら染まるため、細かなシワやスジが、
味わいとなって現れる。
これは、お洗濯やアイロンでは消えたりしない。
pool(プール)
昨年の姉妹伴を見ていただいた方は、
聞き覚えがあるかもしれません。
素材は少し違いますが、あの時とても好評だった、
薄く、ほのかに青味を帯びた涼やかなグレー。
あの素敵なグレーを再び。
背面は、大分量のワンピースデザインの、
バランスをとるかの如くギャザーが施される。
背面をヨークで切り替え、直接カフが付くクラシックなデザインゆえ、
バストの大きさと、このギャザー分量でシルエットが決まる。
もうそれは、センスでしかない。
クラシカルで品のある、センスのいいワンピース。
薄いピンクのペールピーチは、
アプリコットのように見える瞬間もある。
クシャッとしたカフ部分は、バルーン仕立てでねじってある。
この春夏、annabelleはワンピースに力を入れた。
着る枚数が少なくなる春夏、、
使えるワンツーコーデも重要で押さえておきたいが、
やはり気分が高まるのはワンピースではないかと。
男性である僕には体感できないが、
ワンピースをご試着されるときのお客様の表情は、
特別に女性らしく、ウキウキとして見える。
バッグ:私物
ストール:Honnete
シューズ:R.U. Thea(テア)
子供の成長とともに、ワンピースを着る機会が
少し増えた妻も、週に2回程度のワンピースの
着用を楽しみにしているようだ。
大分量ならではの、計算できないドレープは、
人が着て動くことで、あらゆる方向から姿を見せる。
それはそれは美しく、くい入るように見つめてしまう。
穏やかな5月の風になびくその情景は、
秀智とセンスを結集した、アニメーションのようにも見えてくる。
バッグ:safuji
シューズ:R.U. JILL(ジル)
そして、この素敵なハイドワンピースでもうひと素材。
先染めタイプライタークロス
black ¥31,000+tax
素材の違いから、こちらのほうがやや高くなる。
こちらも東炊きのシワ感のある表情が特徴的。
float(フロート)
今年、半袖のサマーヘムレンワンピースにも
用いられている、絶妙なブルーグレー。
落ち着いた色合いの中にも、
しっかりと華がある。
動きによっては、大分量の布地に覆い隠され、
腕が見えなくなったりもする。
「ハイドワンピース」と聞くと、「hide=覆い隠す」という
意味から、大分量の体を覆い隠すようなデザインは想像できる。
でも、この撮影中、動きに応じて様々な印象を残す
このワンピースを目の前に、ひとり、「jekyll & hyde」(ジキルとハイド)を
思い出していた。
あの小説の hyde(ハイド)は、言うまでもなく、hide(ハイド)を
もじって付けた名前だ。もしかして、デザイナーの斎藤さんは、
hide という名前を付けながら、背後には「hyde」を思っていたのかもしれない。
小説のhyde とは少し違った、魅惑的な多面性を感じさせる。
そして、こんな大分量にも難なく重ねて着ていただける、
TRAVAIL MANUEL のボレロカーディガンは頼もしい。
これを重ねると、ワンピースの違った魅力を引き出してくれる。
バッグ:MUUN
シューズ:R.U. JILL(ジル)
カーディガン:TRAVAIL MANUEL
帽子:a tout prix(アトゥンプリ)
ロング丈を生かして、フラットシューズやサンダルも似合いそう。
見るほうの気分も上がるワンピース。
クラシカルな品をまとい、それでいて涼し気。
こういうワンピースに一歩踏み込めない人の心境は、
「日常に取り入れずらい」と思ってしまう。
今見て、少し感じていただいたかもしれませんが、
何かを羽織るとワンピースはたいてい少しカジュアルに見える。
他の洋服との重ね着もしかり。
ジレやストールも。
他にもこれと同じ効果を生むテクニックはある。
式典ぽくない、ブローチをいくつか付けてみたり。
ウェストにマーキングできるアクセサリーを取り入れたり。
小さくてもかまわないから、ショルダーバッグを斜め掛けしたり。
自分なりのパターンが見つかると、着用回数は必ず増える。
カーディガン:TRAVAIL MANUEL
シューズ:VIELLE
バッグ:teha'amana
実はこんなに素敵なハイドワンピース、、
昨年annabelleではお取り扱いをしていなかった。
ある日、いつものようにpoefu の柿本さんから電話が入る。
ハイドワンピースの存在を忘れかけていた僕に、
数十分にわたり、ものすごい熱量でハイドワンピースの
接客をし始めた。
僕にとっては一度、目にしただけのワンピースだったが、
その電話の中で、十分に想像は広がり、
「それ!、やりましょう。」 と言って、電話を切った。
まだ見たこともないのに。
もちろん、あとから確認のため、サンプルを見て、
さらに素材や色の打ち合わせをして今に至るのだが。。
姉妹伴がなければ、こんなに素敵なワンピースと、
二度と出会えなかったのかもしれない。
きっとそういうことが、姉妹伴の存在意義の大きな
理由の一つなのだと思う。
デザイナーという生き物は、意外に自身のデザインの魅力に、
気がつかずに通り過ぎようとする節がある。
それは、デザイナーは常に新しい何かを創造していく人種だから。
だから、なくなりかけそうな名作を拾い上げるのも、
我々バイヤーの大きな役目なのだと、
一つ年上のpoefu さんは、いつも気づかせてくれる。
<大切なお知らせ>
5月7日(日)は、都合により13:00~の営業となります。
ご来店の際は、ご注意ください。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
annabelle