今秋、ゴーシュさんの展示会にて。。。
細長い白壁の空間の両脇に、入荷時期の順番で
商品がきれいに並んでいる。
僕はある商品の前でピタッと止まって、生地を何度も
触って、そして、いろいろ考える。
「なんだこの生地、、、。」
「モッサか?軍モノの1kgメルトンか?」
あまり触れたことのない感触だ。そして、重い。
「カリッとしていて重さがあるから、、、、
ナイロンが少し入った高密度メルトンかな?」
そう思って、品質を確認すると、「WOOL 100%」とある。
いよいよわからなくなって、泉さんに質問する。
「これ何ですか?」
目を輝かせながら、、、
「モッサでもメルトンでもないんですよ。カットパイルなんです。」
カットパイル? 洋服用で?
驚きを通り越して、感動したのを覚えている。
昨日、いよいよ入荷しました。
ゴーーシュ カットパイルフードパーカ ¥54,600(税込)
型は、3月に「ん?」でご紹介した、あのすごいパーカーです。
泉さんの話はまだ続く。
中学時代、先輩にもらったコートがあると言う。
計算すると30年ちょっと前の話だ。
なんとそのコートを今も着ているらしい。
この生地は、その思い入れのあるコートを機屋(はたや)に持ちこんで、
「再現して欲しい。」
と頼んだという。
が、、、、しかし。いつもと反応が違う。
ちょっと困っている。
「これね、、、、。作れる人いるかな?いないかもしれないよ。」
そう言われると泉さんは余計作りたくなる。
とりあえずコートを預けて返事待ち。
時が経ち、返事が来た。
「いたよ、作れる人。一人だけ。」
なんと衣料用のカットパイルを作れる人は
現在、日本に一人しかいないらしい。
色は、黒に見えるが、タテ糸がロイヤルブルー、
ヨコ糸がブラックの綾織物。
よって、全体的にはダークネイビーに見える。
凄まじい加工を3回繰り返すことで出来上がるのだが、
とてもそうは見えないほどに、きれいに目が立っている。
レディースのお洋服とは思えないほどのハードな素材だが、
十二分に、「らしさ」を貫いた、最高の仕上がりだ。
パンツスタイルにはもちろん。
スカートやワンピースにも合わせやすく、
生地の豪快さとは裏腹に、すっきりした印象。
今シーズンのゴーシュさん、
8月のインド手紬から始まり、9月のツイード天竺、
そしてカットパイル、さらにこれからご紹介していく、
高級素材てんこ盛りのハンドフレーム(手ヨコ)のニット。
いつもながらに、トラディショナルな素材作り。
ワンピースはワンピースらしく着てほしい、
その思いからワンピースは全てプルオーバースタイルに。
従来、パンツ中心のメンズライクなスタイルが好きなお二人らしく、
一つを除いて、極端にもボトムスは全てパンツだった今シーズン。
お二人の原点回帰を感じずにはいられない。