メンズのメーカーで働いていた我々が、
突然レディースの小売業を初めて、5年目に入る。
ようやく、小売業にもレディースにも馴染んできた気がする。
当初から、「普遍性」というキーワードが常に念頭にある。
お洋服単体での普遍性は、着るものとしてとらえたときには、
「着心地が良いこと」
それに尽きる。
着た人がそう感じるということは、
生地も良いし、仕立ても良いのだろうから。
ファッションとしてとらえたときには、どうなるか?
「気分があがる」
それに尽きるのではなかろうか。
試着して、鏡で見て、、とにかく自分のものにしたいと思うお洋服。
そして、その二つの尺度からの普遍性には、
どちらも個人差がある。
より良い生地に触れてきた人は、かなり良質なものにしか
着心地が良いと感じないはずだ。
ファッション感度の高い人ほど、洋服単体で見たときに、
ワクワクする回数は減ってゆく。
では、我々の役目はどこにあるのか?
そんなことが少しだけわかってきた5年目の秋。
彼らの洋服は、我々の知る限りでも、
かなりたくさんの人をワクワクさせている。
ゴーシュ
ペーパー天竺ワイドブラウス
ベージュ ¥19,000 + tax
左から、ホワイト、ベージュ、グレーイッシュブルー。
こういったデザインになったとき、
ポケットがなく、すっきりしたものが多い気がするが、
いつものように、メンズのようなシャツポケットが
付いているのを見ると、
ゴーシュのお二人の顔が浮かび、少し笑みが漏れる。
素材も面白い。
触ってみると、しっとりしながらも少しドライタッチで、
わずかに、カサカサした感触がある。
少し厚手の手すきの和紙を触っているような。
手にもって引っ張ってみると、、少し伸びる。
そう、、この生地は編み物なのだ。
だから、名前が「ペーパー天竺」。
コットンだけでは少しダレル気がするのだが、
こちらは、ポリエステルが半分入っているので大丈夫。
それによって、少し魅惑的なタッチと、
製品で染めたときにポリエステルが染まりきらないことで、
生じるメランジ調が面白い。
ゴーシュの裾ゴムテーパーパンツにベージュ。
ゴーシュらしいニュアンスのある生成ベージュは、
ベージュ系にはもちろん、白のボトムスと合わせても
ワントーンコーデが可能になる。
スタイリングの幅が広がりそうだ。
白は、同じベージュのカツラギキュロットに。
カジュアルな印象のあるボトムスでも、
このブラウスと靴を少しキレイ目にしたら、
すぐにちょっとしたお出かけスタイルになる。
なかなか見ない、存在感のある、エレガントな一着。
デザイン物で感じやすい、チープな印象は、みじんもない。
グレーイッシュブルーは、濃色だけに、
冬に向けての重ね着スタイルは作りやすい。
インナーにタートルなどを着れば、
初冬まで十分に活躍するし、春先も着るだろう。
ゴーシュの二人はいつも考えている。
「どうしたらもっと着心地が良くなるか?」
1年365日中、300日はパターンを引くという彼ら。。
ホームページの開設やプレス、営業など、
通常のメーカーが行う、モノつくり以外のことを
できる限り捨てて、彼らは型紙を作る。
そして、うまくいきそうな時、サンプルを作る。
そして、まず自分で着てみる。
全部がそうではないが、展示会に出すのに1年以上
試行錯誤を繰り返すこともあるそうだ。
「どうしたら、もっと着心地が良くなるか?」
「どうしたら、お客さんの気分があがるか?」
彼らの洋服は、そんなシンプルなことを
とことん追求したお洋服です。
筋金入りの洋服屋なのです。