2021年6月25日金曜日

想像を形にしたワンピース

TOKIHO(トキホ)を初めて見たのは、たしか2012年の今時期でした。

青山や表参道あたりを歩くときに、いつもふらっと立ち寄っていた

お店があって(今は残念ながら閉店してしまいました)、 いつものように

入店すると、接客台の上に置いてあった特色だらけのワンピースに

すぐに釘付けになりました。店員さんをつかまえて、どんな人がいつから

どこで作っているのか?色々と聞いてしまって、、2着のTOKIHOを購入して

帰ったのが、僕のファーストTOKIHOでした。

そのとき購入した妻のワンピースも僕のシャツもいまだに現役で、

先日、そのシャツを着て展示会に出かけると、TOKIHOさん本人も

驚くほど懐かしんでおりました。


そう新しいものを次々と作るタイプのデザイナーではありませんが、

僅かな振り幅の中で、とても印象に残り、力のあるお洋服を作る

デザイナーだと感じています。

今回も、手法はオーソドックスでありながら、既制服では見たことのない

ワンピースを提案してくれました。













TOKIHO
SOLO Ⅶ(バンドカラーワンピース)
グレー ¥37,950(税込)

生地に触れた時の第一印象は、「アンティークの生地ですか?」でした。

TOKIHOさんが好みそうなしっかりとした、やや硬さもあるタッチで、

まず他のメーカーのものでは出てこない感触の生地にも驚きましたが、

さらに驚いたのはその後のお話でした。









デザインは、TOKIHOでは定番的なベースデザインとして

いくつものシリーズが存在する「SOLO」のワンピース。

イカ胸のステッチが片側だけというのもかっこいい。
















ホールド感のある袖口には、可愛らしくカンヌキのようなステッチが。










ポケットもありますよ。









脇にはスリットが施され、ガセット布も。












裾の形は、浅いVカット。

ゴワゴワしていそうな(実際している)シワ感はもちろん狙ったもの。

着用して洗濯を繰り返しながら、少しづつ腰が抜けていく布地の経年も

楽しんでいただきたい。














ブラック

モノトーンな色展開は、TOKIHOらしい。

独特で素敵なグレーとシンプルなブラック。









さて、間が空いてしまいましたが、、、

驚いたのはこちら。

わかりにくいのですが、よく見てください。

写真の中央あたりとそのやや右下あたりに見えるでしょうか。

十字柄の補修跡が。。

どうやら、お付き合いのある機屋さんで穴あきの布地があったそうで、

通常はもちろん販売されないものなのですが、TOKIHOさんはそれを

見て、この補修をやりたいと考えたそうです。

イメージしたのはアンティークと言われる時代の補修のある布地の姿。

生地屋さんにも協力してもらい、たった二人でひたすらチクチクした

その出来栄えがすごい。

こうなると、、「補修跡が多いものがほしい!」という変な発想に

なってしまいますが、生地を裁断する場所によって多かったり、少なかったり。

結局、グレーとブラックで約20着分が補修の限界だったようですが、

そのうち6着がアナベルに入荷しております。












ふんわりパンツの白に合わせて、靴は最近またマイブームの

R.U.のTストラップ。









アンティークの小さなかごとTストラップ。

ゴワゴワとしたシワ感のあるTOKIHOのワンピース。









袖がなくなると、より付けたくなる腕周り、指周りの

アクセサリー。その日のお洋服や気分で色々アクセサリーも

変えて楽しみたい夏。

妻が付けているアクセサリーをご質問いただくこともありますが、

たいていは、お店で販売しているもの、もしくは販売していたものですので

遠慮なくお問い合わせください。

お問い合わせの多い、「yasuhide ono」の展示は、少し遅いのですが、

7月31日〜8月3日の4日間だけ開催いたします。

内容につきましてはこれからの告知になりますので、お楽しみに。
















TOKIHOのお洋服は、コートなどを着ていただいたことのある人は

わかるとお思うのですが、「なんで重いのに着るとこんなに軽快なの?」って、

だいたい皆さん同じことを言ってくださいます。









グレーにも十字の補修跡が。

確かにTOKIHOさんの作るお洋服は、打ち込みのある素材が多いため、

必然と重量もそれなりになります。しかし重さで諦めるには

非常にもったいないお洋服です。












ブラックは、裾ゴムパンツの白に合わせて。

こちらもついついTストラップを。

これは、妻の私物で現在取扱のないお色です。









このパンツと革靴の組み合わせ、大好きです。









とってもおしゃれ。









TOKIHOを初めて見た時の印象は、お取り扱いを開始して

数年経った今も変わらずに僕の記憶の中に鮮明に在り続けます。

こんなにも欲張らない、こんなにも僅かな変化を楽しめる

デザイナーもなかなか居ないのではないでしょうか。


ほとんどの人が、少し面白そうなことを頭に浮かべても、

何がしかの言い訳を用いて実行には移さないことってよくありますね。

穴のある生地に補修をかけてから洋服を作ることも、どれだけ大変な

作業になるかはすぐに想像ができます。だから普通の人は、すぐに

こう思うはずです。「大変すぎるな、、時間も足らないかもしれない。」

「そればかりやってられないし。。」

TOKIHOさんだって、全くそれを考えなかったわけではないと思います。

でもやってしまう人が、きっと面白いものを作る人なんだと思います。

想像を形にするって、すごくパワーのいることですから。


十字の補修跡が愛おしくも感じられるワンピースを

夏のワードローブに加えてみてください。