2017年2月19日日曜日

都合のいい輪切りなわたし

今シーズンの展示会で、

一番の歓声をあげたのは何だったか?

それはそれは、小さなお店に入るように、

最初から絞りに絞ってはあるので、

毎回のごとく、どれもお気に入りではあるのだが、

これだけ何年も洋服を見てくると、

新鮮さを感じるものに飢えてくる。

地味な存在ながら、新鮮さからときめいたのは、

ひょっとしたらこれかもしれない。





















FIRMUM

ベアフライス長袖シャツ

ホワイト ¥10,000(税抜)

ベアフライスとは、伸縮性のあるフライス編素材に、

ポリウレタンが混入したものを指す。

より、しっかりとしたキックバックを感じられる。





















トップグレー

そして、この素材は、「丸胴」(まるどう)と呼ばれ、

筒状に丸編みされた状態を生かし、そのまま洋服にしている。

だから、脇のハギはない。ノーシーム。

だが、そういう洋服は決して珍しくない。

僕が、ハッとしたのももちろんそこではない。





















ブラック

通常の洋服デザインの発想からすると、

「しっとりと肌触りのいい丸編み」



「ノーシームで伸縮性豊かだから体にフィットしたものを」

その結果、細身で体のラインが出ることを

恐れない女性しか着ないか、もしくはひたすら

インナーでしか着ない洋服となる。















袖口、裾はともにカットオフ。















そもそも、フライスのカットソーという時点で、

多くの人が、「アンダーウェアー」を連想するでしょう。

ニットならまだしも、カットソーのフライスを、、

しかも丸胴で、ベアフライスとなれば、

ひょっとしたら、洋服を見慣れている人ほど、

「ちょっと上質なアンダーかな?」って通り過ぎるかもしれない。

僕もそうなりかけたが、、なんとなく手に持った感触が、

アンダーにしては重い。

着てもらうと、それはちょっと不思議な印象の洋服でした。















僕が面白いと思ったのは、

ベアフライスなのに、体にぴったりフィットしないところ。















裾をカットオフにしてあるのは、

着た人の好みで、適当に内側に折り込めば、

素敵な感じで成立してしまうから。





















展示会場で、

「なんだこのサイズ感。。」

と、ちょっと不思議に思っていると、

バイヤー用に手渡される用紙に、こう書かれている。

「※メンズは、ぴったりとしたサイズ感です。」

僕が面白いと思ったポイントはまさに、そこである。















普通、丸胴のフライスは、ぴったり作りたがる。

ひょっとしたら、ベテランほどそう思うかもしれない。

だから、メンズは作るけど、レディースは

サイズが合わないからやめようか、、となる。

それを、

「いや、同じサイズで丈だけ変えたらかっこいいんじゃない?」

という、かるーい豊かな発想で、企画したであろう、、、

この、丸胴フライスなのに、体から少し浮いている、

不思議なサイズ感のお洋服が、僕にはとっても新鮮に見えた。















袖部分は、女性用にしっかりきれいに細身です。

でも、嬉しいことに妻が365日気にかけている二の腕は、

ぴったりはしていないのです。





















フライスシャツなのに、

なかなか幅広い体系の人たちを

ワンンサイズで包み込む。

そして、かっこいい。















そして、ボトムスの形に応じて、裾の長さは自由自在。

内側に折り込んだり、引っ張って上にあげてブラウジングさせたり。

ワイドパンツやスカートは短めがかっこいい。















そして、とてもとても、しっとりとした肌触り。

しっかりとした糸本数で編まれたこの素材は、

透けも全く気にならない。

おそらく、生産側の効率もものすごくいいはずだ。

残念ながら、染色がかなり難しく、ブラックは今回限りとなるが、

そのデザインへのアプローチと、生産のプロセスは、

とても、彼ららしい、プロダクトデザインのような逸品です。

そして、なんとも都合のいい一品です。

長袖のほか、6分袖とノースリーブが控えております。